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2019/11/13

総合 - ドイツ経済ニュース

「政府は構造問題対策を」=5賢人委

この記事の要約

景気悪化の悪循環入りを回避するとともに、経済競争力を長期的に維持・強化できるようにするよう促した。

来年のGDP成長率については0.9%に上昇するとの予想を示した。

少子高齢化を背景に今後は経済の高成長と歳入の大幅拡大が見込めないことから、政府は新規赤字を可能な限り回避したい考えだ。

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は6日、アンゲラ・メルケル首相に『秋季経済予測(経済鑑定)』を提出した。今回はドイツ経済が抱える構造的な問題と景気低迷を踏まえ、経済・財政施策の見直しを提言。景気悪化の悪循環入りを回避するとともに、経済競争力を長期的に維持・強化できるようにするよう促した。

5賢人委は「構造転換を乗り切る」とのタイトルを付けた今回の『予測』で、ドイツ経済の生産性の伸びが近年、弱まっていることを指摘。その原因として少子高齢化の進展、新技術投入に対する消極的な姿勢、不活発な起業、投資の低迷を挙げた。

ドイツ経済は2014年から18年上半期まで比較的高い成長を続けてきた。だが、その後は米国が引きここした通商摩擦の影響などで急減速。成長率が再び大きく上向く兆しは出ていない。

5賢人委は、ドイツが抱える構造問題への対策を好景気時に政府が怠ったことが生産性の伸び率鈍化という形で現れていると批判した。そのうえで、企業活動を促進する枠組み条件を創出することが政府の役割だと指摘。税負担の持続的な軽減を通して投資と雇用の創出を促進するよう促した。具体策としては連帯税の全面廃止、法人税と電力税の引き下げを挙げた。

同委は今回、19年の国内総生産(GDP)の実質成長率(物価調整値)を春季予測の0.8%から0.5%へと引き下げた。下方修正は2度目。昨年秋の時点では1.5%を提示していた。世界経済の減速を受けて輸出型産業が低迷。輸出の伸びが輸入を大きく下回ることから、GDP成長率に対する外需の寄与度はマイナス0.7ポイントに達する。また、設備投資の伸び率は前年の4.4%から1.6%へと大きく低下する。製造業に限るとドイツ経済は景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)に入っているというのが5賢人委の見方だ。

来年のGDP成長率については0.9%に上昇するとの予想を示した。ただ、来年は営業日数が4日多く、これを加味したベースでは成長率が0.5%にとどまる見通し。これまで低下してきた失業率も0.1ポイント増の5.1%と上昇に転じる。

深刻な経済恐慌に陥るリスクは現時点でないとしている。製造業以外の部門が好調で、内需が堅調を保っているためだ。欧州中央銀行(ECB)が超金融緩和政策を行っていることもあり、景気対策を独政府が行う必要はないとしている。

ただ、累積債務の削減に取り組む政府が単年度財政赤字の計上を回避する「シュヴァルツェ・ヌル(わずかな黒字)」政策に固執していることに対しては、景気悪化に拍車をかける恐れがあるとして、見直しを求めた。

ドイツは11年の憲法(基本法)改正で、単年度財政赤字の対名目GDP比率を原則0.35%未満に抑えるルールを導入した。少子高齢化を背景に今後は経済の高成長と歳入の大幅拡大が見込めないことから、政府は新規赤字を可能な限り回避したい考えだ。

だが、5賢人委は、新規赤字の計上を憲法は禁じていないとして、政府に柔軟な姿勢を促した。

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