2010/1/11

総合 –EUウオッチャー

アイスランドが英蘭への預金返済棚上げ、EU加盟に影響か

この記事の要約

アイスランドのグリムソン大統領は5日、金融危機で経営破たんした同国の大手銀行に口座を持っていた英国とオランダの預金者への返済を保証する法案への署名を拒否した。同法案は同国の法律に基づき国民投票にかけられることになるが、国 […]

アイスランドのグリムソン大統領は5日、金融危機で経営破たんした同国の大手銀行に口座を持っていた英国とオランダの預金者への返済を保証する法案への署名を拒否した。同法案は同国の法律に基づき国民投票にかけられることになるが、国民の多くが反対しており、否決が濃厚。英国とオランダは合意違反と反発しており、同問題がアイスランドのEU加盟に悪影響を及ぼす可能性が出てきた。

\

アイスランドは2008年10月、破たんしたランズバンキを国有化すると同時に、同行のネット銀行「アイスセーブ」の外国人口座を閉鎖した。これにより英国、オランダの預金者が大きな影響を受けた。両国の預金者には、それぞれの政府が肩代わりして払い戻され、アイスランドが両政府に総額57億ドルに上る債務を抱える形となっている。

\

3カ国は昨年、債務返済で合意し、アイスランド議会は12月末に関連法案を可決した。ところが、国民は政府が巨額の資金を支払うことで国内経済にしわ寄せが及ぶことを懸念し、法案に反対する署名活動を展開。有権者の4分の1が署名したため、大統領は世論を尊重して法案への署名を拒否し、法律に基づいて国民投票にかけることになった。国民投票は2月に実施される見通しだが、世論調査では国民の7割が法案に反対しており、否決が確実な情勢だ。

\

今回の事態に英国とオランダは猛反発。英財務省のマイナーズ政務次官は「この問題は、アイスランドのEU加盟申請を支持するかどうかを決める要素になる」と述べた。EU議長国スペインのモラティノス外相も8日、記者団に「(同問題で)加盟に向けた交渉が遅れることもあり得る」と述べ、アイスランドに対応を促した。アイスランドは昨年7月にEU加盟を申請しており、EUは3月にも加盟交渉開始を認めるかどうか決めるが、国民投票で法案が否決されると英、オランダが拒否権を発動することも予想される。

\

さらにアイスランドにとっては、同問題がこじれれば国際信用力が失墜し、海外からの金融支援を受けられなくなる懸念も浮上している。とくに重要なのが国際通貨基金(IMF)と北欧諸国から取り付けた46億ドルの支援の実施。IMFは英、オランダへの債務返済が融資の条件ではないとしているが、フィンランドなど北欧諸国は問題視しており、残る25億ドルの支援が凍結される可能性がある。金融危機に直撃され、非常事態を宣言したアイスランドにとって同支援は命綱に等しく、この問題が経済にも大きな影響を与えかねない状況だ。

\

こうした状況を受けて、格付け会社フィッチ・レーティングスは5日、アイスランドの長期外債格付けを「BBBマイナス」から投資適格外の「BBプラス」に引き下げた。

\