2010/4/12

環境・通信・その他

ETS対象事業所のCO2排出量11%減、経済危機による生産縮小で

この記事の要約

排出権取引関連の調査会社ポイントカーボンが1日発表した最新報告書によると、EU排出量取引制度(ETS)の対象となっている事業所と発電所の2009年の二酸化炭素(CO2)排出量は推定18億9,000万トンで、前年の水準を1 […]

排出権取引関連の調査会社ポイントカーボンが1日発表した最新報告書によると、EU排出量取引制度(ETS)の対象となっている事業所と発電所の2009年の二酸化炭素(CO2)排出量は推定18億9,000万トンで、前年の水準を11.2%下回った。経済危機の影響による生産活動の停滞が排出実績に反映された形で、取引制度がスタートした05年以降で最大の減少幅を記録した。

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同報告書は排出権の移転状況を記録した取引ログ(CITL)を通じて欧州委員会が公表した事業所ごとの排出実績を基に、ポイントカーボンが全体の傾向を分析したもの。国別にみると、エストニアでCO2排出量が前年比24%減となったのをはじめ、ルーマニアで22%減、イタリアとスペインでもそれぞれ16%減と大幅に減少しており、経済危機の影響が特に大きかった国で前年と比べた排出量の減少幅が大きくなっている。

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ポイントカーボンの欧州担当アナリスト、チェルスティ・アルセット氏は「昨年は石炭火力発電所が増える一方で原子力発電所が減少し、発電所からのCO2排出量は前年の水準をわずかに上回ったが、経済危機に伴う生産活動の停滞によって全体の排出レベルが大幅に減少した」と指摘している。

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排出量取引制度に参加する事業所の多くでCO2排出量が各国政府に割り当てられた排出枠を下回ったことで、排出権価格は引き続き1トン当たり13ユーロ前後と低い水準で推移している。アナリストらは企業が真剣に排出削減に取り組むようになるには、排出権価格が1トン当たり30ユーロに近い水準まで上昇する必要があるとみており、このまま現在の価格水準が続いた場合、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を図るための投資が停滞することになると警告している。

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