2010/5/17

産業・貿易

金融監督制度改革案が成立へ前進、欧州議会の金融委が修正案可決

この記事の要約

欧州議会の経済金融問題委員会は10日、金融危機の再発防止に向けた新たな金融監督体制の構築に関する法案の修正案を賛成多数で可決した。法案の柱は金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」と、EU […]

欧州議会の経済金融問題委員会は10日、金融危機の再発防止に向けた新たな金融監督体制の構築に関する法案の修正案を賛成多数で可決した。法案の柱は金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」と、EUレベルで銀行・保険・証券の各セクターを管轄する3つの監督機関の新設。欧州委員会の原案に比べて修正案は各機関の権限を強化した内容になっている。早ければ6月の欧州議会本会議で採決が行われ、2011年に新体制が発足する見通しだ。

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EUにはすでに銀行・保険・証券市場を監視するセクター別の委員会が設置されているが、欧州委に助言を行う機関としての位置付けにとどまっており、各国当局が協調して金融市場を監督するシステムは整っていない。新体制では3つの委員会に代わって新たに「欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)、欧州証券監督機構(ESMA)が創設され、EU各国の当局者間の調整や、EUルールが適正に運用されるための解釈や基準の策定といった機能を担うほか、危機に際して緊急対応策を採用する権限などが与えられる。さらに各セクターの監督機関による協力体制を強化するため、3機関の代表で構成する合同委員会を設置。3機関と合同委員会、さらに各国当局を加えて「欧州金融監督システム」を構築し、金融機関に対する監督の実効性向上を図る。

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一方、ESRBは欧州金融監督システムなどを通じて個別金融機関に関する情報を収集し、EUの金融システム全体のリスクについて分析を行う。リスクが特定された場合は当事国の監督当局に向けて警告や対応策の勧告を行い、各国の対応状況をモニターする。

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今回可決された修正案には◇セクター別の監督機関に国境を越えて活動する金融機関を直接監督する権限や、特にリスクの高い金融商品の販売を差し止める権限を与える◇EBAなどの監督下に置かれる金融機関に対し、リスク評価に応じて欧州預金保証基金および欧州安定基金への拠出を義務付ける◇ESRBはリスクが特定された場合に当事国に警告を行うだけでなく、リスクを公表する役割を担う◇金融機関の抱えるリスクの程度や種類がひと目で分かるようにするため、ESRBが共通の指標を策定する◇各機関が相互に連携しやすいよう、新設するすべての監督機関をフランクフルトに置く――などが盛り込まれている。

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