2010/5/17

総合 –EUウオッチャー

英で連立政権発足、最大の課題は財政再建

この記事の要約

英国で先に実施された総選挙で第一党となった保守党と第三党・自由民主党との連立よる新政権が11日発足し、保守党党首のキャメロン氏が新首相に就任した。就任直後に自民党のクレッグ副首相とともに記者会見を行った首相は、新政権の最 […]

英国で先に実施された総選挙で第一党となった保守党と第三党・自由民主党との連立よる新政権が11日発足し、保守党党首のキャメロン氏が新首相に就任した。就任直後に自民党のクレッグ副首相とともに記者会見を行った首相は、新政権の最優先課題が財政再建であることを表明。中道右派の保守党と中道左派の自民党には数多くの政策の違いがあるものの、「強く安定した政府」を目指し、まずは国内総生産(GDP)の11%にまで膨れ上がった財政赤字の削減という喫緊の問題に着手する。今のところ、赤字削減は主に今年度からの歳出削減によって実現し、増税には頼らない方針だ。

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新政権は50日以内に緊急予算を組み、60億ポンドの歳出削減を目指す。公務員給与のカットや政府業務の合理化になどに踏み切るとみられ、13日に開いた初めての閣僚会議では、閣僚の給与5%削減と向こう5年間の昇給凍結に全閣僚が合意。国民と痛みを分かち合う姿勢を前面に打ち出した。ただし、専門家らの間では、付加価値税を現在の17.5%から20%近くにまで引き上げることや、年金給付費の削減について今後、議論が浮上する可能性があると指摘されている。

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保守・自民両党はまた、相続税の課税対象額の引き上げの見送りや、所得税の課税最低限の1万ポンドへの引き上げを実施することで合意。政権の安定化を図るため、任期満了までの5年間は議会を解散しないこと、小選挙区制度への「選択投票制」の導入について国民投票を実施することでも同意した。そのほか、連立期間中は単一通貨ユーロに参加しないことを決定。国の権限をEUに委譲することについては必ず国民投票を行うことでも一致した。新政権は内政重視であるとされ、対EU政策については現実路線を取るものとみられている。EUの権限強化には反対で、EU懐疑論者の代表格とされるキャメロン氏の首相就任により、EU統合の推進に向けた足並みに乱れが生じると懸念する加盟国もあったが、クレッグ氏は元欧州議会議員で、親EUで知られている。

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なお、新政権の主要閣僚は以下のとおり。◇首相デビッド・キャメロン(保守党党首)◇副首相ニック・クレッグ(自民党党首)◇財務相ジョージ・オズボーン(保)◇外相ウィリアム・ヘイグ(保)◇内相テレザ・メイ(保)◇法相、ケネス・クラーク(保)◇企業相ビンス・ケーブル(自)◇財務相主席担当官デイヴィッド・ローズ(自)。22の閣僚ポストのうち、5つが自民党議員に割り振られた。

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