2010/10/25

産業・貿易

銀行危機管理にEU共通の枠組み構築、当局の早期介入など可能に

この記事の要約

欧州委員会は20日、域内の銀行を対象とするEU共通の危機管理の枠組みを構築する方針を発表した。金融当局が早い段階で経営不振に陥った銀行の経営に介入できる仕組みを整え、再建が不可能な場合は金融システム全体に影響が及ばないよ […]

欧州委員会は20日、域内の銀行を対象とするEU共通の危機管理の枠組みを構築する方針を発表した。金融当局が早い段階で経営不振に陥った銀行の経営に介入できる仕組みを整え、再建が不可能な場合は金融システム全体に影響が及ばないよう、速やかに整理・閉鎖できるようにするのが狙い。金融危機で銀行救済に巨額の公的資金を投じた結果、多くの国で財政悪化が深刻化した反省を踏まえ、銀行が「大きすぎてつぶせない」事態をなくして金融システムの安定化を図る。欧州委は2011年春をめどに法案をまとめる方針を示している。

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欧州委の構想によると、危機管理は「準備・予防措置」「当局による早期介入」「清算」の3段階で行われる。まず準備・予防措置の段階では、将来的に経営難に陥った場合に迅速に対応できるよう、各銀行が再生・清算計画を策定する。早期介入の段階では当局が幅広い権限を持ち、問題行に対して配当の停止、経営陣の刷新、高リスク事業からの撤退、組織再編などを命じることができる。再生の見込みがないと判断した場合は事業規模にかかわらず、速やかに清算手続きに入り、事業売却や不良債権の分離などを進める。

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一方、銀行の破綻・清算処理にかかる費用を賄うための財源として、欧州委は今年5月、域内の金融機関に資金の拠出を義務付けて「清算基金」を創設する構想を打ち出している。納税者に破綻した銀行の清算処理コストを負担させることのないよう、各行の資産や負債規模に応じて一定の割合を課税する仕組み。欧州委は基金を機能させるために必要な資金規模や適正な税率、EUが導入を検討している預金保証制度との関係などについてさらに検討を進める意向を示している。

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EU各国は今回の金融危機で銀行の救済に巨額の公的資金を投入しており、欧州委によると支援規模は全体で域内総生産(GDP)の13%に達した。同委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は声明で「金融危機の再発防止に向け、EU全体で銀行セクターに対する監督体制の強化に努めているが、将来的に銀行が危機に直面するリスクを排除することはできない。そうした場合でも金融システム全体を崩壊させたり、納税者にコストを負担させることなく銀行が破綻できるようにしなければならない」と指摘。EU共通の枠組みを設けて金融当局が緊急時に迅速に対応できる仕組みを整える必要があると強調した。

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