2011/5/2

環境・通信・その他

スカイプなど妨害の疑いで欧州委が調査、「ネットの中立性」確保へ法規制も

この記事の要約

欧州委員会は4月19日、EU域内の通信会社や携帯電話サービス事業者が「スカイプ」などのインターネット電話サービスを妨害しているとの苦情を受け、実態把握に乗り出す方針を明らかにした。EUではネットワークの開放性と中立性の保 […]

欧州委員会は4月19日、EU域内の通信会社や携帯電話サービス事業者が「スカイプ」などのインターネット電話サービスを妨害しているとの苦情を受け、実態把握に乗り出す方針を明らかにした。EUではネットワークの開放性と中立性の保障を盛り込んだ通信規制改革法が5月25日から施行されるが、スカイプなどへの差別的扱いはこれに反するため、加盟国の通信当局のトップで構成する欧州通信監督機関(BEREC)を通じ、EUレベルで調査を実施する。欧州委は年末までに調査結果を公表し、必要に応じて新たな規制の導入を検討する方針を示している。

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EUは通信環境の変化に対応して消費者の選択肢を広げるため、09年にネットの中立性を確保して事業者間の競争を促すことや、固定および携帯電話番号を維持したまま1営業日以内に事業者を変更できる権利を保障することなどを柱とする通信規制改革法を採択した。今回問題となっているのは、インターネットを利用した各種サービスへの差別を禁止するネットの中立性原則に関するルール。ネットワークを所有する通信会社などは最低限のサービスを維持するため、回線の混雑状況に応じた合理的なトラフィック管理が認められているが、アクセスを制限する場合は事前にユーザーに通知するなど、透明性の確保に務めることが義務付けられている。

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欧州委には複数の携帯電話ユーザーから、事前通告がないまま夜間などの時間帯にスカイプの利用を制限されたとの苦情が寄せられており、通信会社が意図的に通信速度を遅くして他社のサービスを妨害するといったケースも報告されている。ユーザー間で無料・無制限の音声通話が可能なスカイプは通信会社や携帯電話会社にとって大きな脅威になっており、収益悪化を防ぐ目的で通信会社などが不公正なトラフィック管理を行っているとの見方が強まっている。

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欧州委のクルース副委員長(デジタル政策担当)は「オープンで中立なインターネットへのアクセスを保証し、事業者間の競争を促進することがEU市民とビジネスに恩恵をもたらすと確信している」と強調。各国当局と連携してトラフィック管理の実態把握に努め、公正な競争を阻害し、消費者の選択肢を狭める行為を禁止するための具体策を検討すると述べた。

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