2011/5/2

環境・通信・その他

EU-ETS第3期の排出枠無償割当、欧州委がベンチマーク方式を正式決定

この記事の要約

欧州委員会は4月27日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期(2013-20年)における排出枠の無償割当方法に関する決定を採択した。欧州委の提案に沿って、13年からオークションによる排出枠の有償配分と並行して、ベン […]

欧州委員会は4月27日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期(2013-20年)における排出枠の無償割当方法に関する決定を採択した。欧州委の提案に沿って、13年からオークションによる排出枠の有償配分と並行して、ベンチマーク方式による無償配分が実施される。欧州委が昨年10月に提示した決定の草案は、EU各国の代表による気候変動委員会の採択を経て欧州議会と欧州理事会の承認を得ており、欧州委の採択をもって正式決定された。

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EUは各国政府が排出枠の大部分を対象施設に無償で割り当てる現行システムに変わり、13年以降は段階的にオークションによる有償配分に移行することを決めているが、それに伴い、厳しい国際競争下にある産業分野の企業が規制の緩い第3国に移転する「カーボンリーケージ」が加速するとの懸念が広がっている。EU-ETS第3期に向けた制度改正ではこうした点を踏まえ、カーボンリーケージが起きる可能性のあるセクターへの移行支援措置として、域内共通のベンチマークを事前に設定し、それに基づいて排出枠を無償で割り当てる方針を決定。欧州委はこれを受けてベンチマークを含む具体的な割当方法の策定を進め、産業界や加盟国など各方面との協議を重ねてきた。

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欧州委の決定によると、ベンチマークは07-08年の排出実績を基に、各セクターで最もエネルギー効率の高い上位10%の施設の平均排出量をベースに算出されている。欧州委がカーボンリーケージにさらされる可能性があると認定したセクターは、ベンチマークに基づき20年まで100%の無償割当を受けることができる。一方、それ以外のセクターに関しては、ベンチマークに対する無償割当の比率が13年の80%から20年は30%まで引き下げられる。排出枠の無償割当が実施される産業セクターのうち、欧州委は52の主な製品カテゴリーについて具体的なベンチマーク値を策定した。これ以外の製品を製造している施設に関しては、エネルギー消費量に基づいて無償割当の排出枠が決定される。

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今後の流れとしては、加盟国が無償割当の対象となる個々の施設について、過去の生産活動に関するデータ(製品の生産量やエネルギー消費量)を収集し、それを基に20年までの無償割当量を算出して9月30日までに欧州委に提出。欧州委は提出されたデータをチェックし、各国に修正を指示して12年末までに最終的な無償割当量を確定させる。

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