2011/8/8

総合 –EUウオッチャー

欧州中銀も信用不安対策、国債買い取り再開など

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は4日、フランクフルトで開いた定例政策理事会後の記者会見で、ユーロ圏で発行された国債の買い取りの再開を含めた量的緩和策を実施すると発表した。信用不安がイタリア、スペインにも波及している […]

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は4日、フランクフルトで開いた定例政策理事会後の記者会見で、ユーロ圏で発行された国債の買い取りの再開を含めた量的緩和策を実施すると発表した。信用不安がイタリア、スペインにも波及していることを受けたもので、資金繰りが厳しさを増している金融機関を支援する。

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ECBはギリシャに端を発したユーロ圏の信用不安が広がった昨年5月から、機能不全に陥った金融市場での流動性を確保するため、ユーロ圏の財政不安がある国の国債買い取りを実施。これまでに740億ユーロに上るギリシャ、アイルランド、ポルトガルの国債を買い取った。買い取りは3月から行っていなかったが、信用不安が拡大していることから再開に踏み切った。

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ECBは同時に金融機関の資金繰り支援として、世界的な金融危機への対策として導入した6カ月物資金の無制限供給を10日に再開することを決定。また、短期資金の供給を年末まで継続する方針も打ち出した。

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同日の理事会では、ユーロ圏17カ国に適用される最重要政策金利を現行の年1.5%に据え置くことを決めた。ECBは7月に今年2回目の利上げを実施したばかりで、今回の決定は予想通り。市場の注目は、トリシェ総裁が追加利上げを示唆するかどうかに集まっていた。

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ユーロ圏の7月のインフレ率は速報値ベースで前年同月比2.5%となり、ECBが上限目標値とする2%を大きく上回ったものの、前月の2.7%から低下した。同総裁は記者会見で、現行金利は「なお緩和的」で、今後の物価動向を「注意深く見守る」としながらも、「景気の不透明感が非常に高まっている」と述べ、早期の追加利上げに消極的な見解を示した。

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これまで市場では、ECBが10月にも追加金融引き締めに踏み切るとの観測が出ていたが、今回の発言により当面は利上げを見送るという見方が広がっている。

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