2011/8/8

総合 –EUウオッチャー

キプロス銀がEUへの支援要請示唆、欧州委は否定的見解

この記事の要約

財政危機に陥ったギリシャと経済的なつながりの深いキプロスが、ギリシャとアイルランド、ポルトガルに次いでEUから金融支援を受けるユーロ圏4番目の国となる可能性が出てきた。国内最大手銀行のバンク・オブ・キプロスは1日、同国が […]

財政危機に陥ったギリシャと経済的なつながりの深いキプロスが、ギリシャとアイルランド、ポルトガルに次いでEUから金融支援を受けるユーロ圏4番目の国となる可能性が出てきた。国内最大手銀行のバンク・オブ・キプロスは1日、同国が金融支援を要請しなければならない「差し迫った脅威」に直面していると警告し、政府に緊急の対応を求める声明を発表した。5日発足した新内閣のカザミアス財務相は現時点で国際的な支援メカニズムは必要としていないとの認識を示し、欧州委員会もキプロスへの支援は検討していないと言明しているが、3大格付け会社は政府による緊縮財政の取り組みが不十分などとしてここ数カ月にキプロスの格付けを相次いで引き下げており、市場では財政悪化への懸念が強まっている。

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キプロス銀は声明で「いますぐ行動を起こさなければ国家財政を立て直す機会を失い、深刻な事態に陥りかねない。わが国はEUによる金融支援の枠組みを余儀なくされる差し迫った脅威に直面している」と警告。「緊急かつ有効な対策を講じるべき時が訪れている」と指摘し、政府に対し緊縮財政の取り組みを強化するよう訴えた。

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カザミアス新財務相はEUの支援メカニズムが必要かとの質問に対し、「現時点でその必要性はないと考えている。各方面が適切な対応を取れば船は正しい方向に進むと確信している」と発言。緊縮財政策について労組との協議を加速させる考えを示した。一方、欧州委は声明で「キプロスへの金融支援策は協議されていない。同国が財政健全化に向けて必要な対策を講じると確信している」と表明している。

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キプロスはユーロ圏の中でも国内の主要銀行によるギリシャ国債の保有率が高く、市場ではキプロス自身の国債利払い能力を疑問視する声が高まっている。さらに先月11日には海軍基地の武器貯蔵庫で発生した大規模な爆発の被害で国内最大の発電所が送電を停止する事態に陥った。キプロス中銀のオルファニデス総裁は事故を受けてフリストフィアス大統領に書簡を送り、国内経済の建て直しに向けた抜本的な措置を早急に取らなければEUなどに金融支援を要請せざるを得ない事態に陥る可能性があると警告した。こうしたなかで米ムーディーズ・インベスターズ・サービスがキプロス国債の格付けをジャンク債から2段階上の水準まで引き下げたことが直接の引き金となって政府の危機対応に対する国民の不満が急速に高まり、フリストフィアス大統領は内閣解散に追い込まれた。同大統領は野党側の辞任要求を拒否し、引き続き政権トップの座に就いている。

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