2012/2/27

競争法

スイス資源大手2社の合併、欧州委が審査手続きに着手

この記事の要約

スイスの大手資源商社グレンコアと鉱山大手エクストラータは24日、両社の合併計画について欧州委員会から正式に届出を行うよう要請があったことを明らかにした。両社は長年にわたり資本面で提携関係にあることから、欧州委は過去にエク […]

スイスの大手資源商社グレンコアと鉱山大手エクストラータは24日、両社の合併計画について欧州委員会から正式に届出を行うよう要請があったことを明らかにした。両社は長年にわたり資本面で提携関係にあることから、欧州委は過去にエクストラータが関与した買収案件の審査に際し、同社とグレンコアを単一企業とみなした経緯がある。このため、市場では両社が欧州委の審査を免れるとの見方が有力だった。欧州委は届出から25営業日以内に予備調査の結果をまとめ、計画を承認するか、本格調査に入るか判断を下す。

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グレンコアとエクストラータは今年2月に合併で合意した。計画が実現すると、資源開発と販売の両分野で事業を展開する世界4位の鉱山資源会社が誕生する。グレンコアは以前からエクストラータに34%出資しており、環境規制の強化などを背景に鉱山開発コストが上昇するなか、かねてから合併の機会をうかがっていた。

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欧州委は2006年にエクストラータがカナダのファルコンブリッジを買収する案件について計画の可否を判断する際、グレンコアが実質的にエクストラータの経営権を握っており、両社は単一の企業グループを形成しているとの見解を示していた。このためアナリストらの間では、両社の合併計画は欧州委による審査の対象にならないとの見方が広がっていた。競争法に詳しい複数の法律家は、欧州委が今回、両社に対して合併計画の届出を求めたことは過去の判断と矛盾すると指摘。ビジネス環境が変化するなか、06年以降もエクストラータが実質的にグレンコアを管理する体制が続いていたかどうか、その点が新たな疑問として浮上した可能性を指摘している。

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グレンコアとエクストラータの合併が実現すると、統合新会社は火力発電用石炭の輸出で世界最大手となるほか、亜鉛やクロム鉄の生産量でも首位に立つ。ただ、いずれの分野でも常に激しい競争が展開されており、両社を合わせたシェアは10%に満たない。このため市場関係者の間では、欧州委が両社の合併を阻止したり、大幅な計画の変更を求める可能性は低いとの見方が有力だ。

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