2012/7/2

総合 –EUウオッチャー

統一特許裁の設置場所で合意、14年に単一特許制度創設へ

この記事の要約

EU加盟国は6月29日、域内共通の単一特許制度の創設について協議し、特許訴訟制度を一元化することで合意した。特許関連の紛争処理にあたる「統一特許裁判所」の設置場所をめぐり、加盟国の間で調整が難航していたが、裁判所の本部機 […]

EU加盟国は6月29日、域内共通の単一特許制度の創設について協議し、特許訴訟制度を一元化することで合意した。特許関連の紛争処理にあたる「統一特許裁判所」の設置場所をめぐり、加盟国の間で調整が難航していたが、裁判所の本部機能をパリに置き、特定分野の事案を扱う専門機関をロンドンとミュンヘンに開設する妥協案が成立。2014年にも単一特許制度が創設される見通しとなった。7月上旬に予定される欧州議会本会議で、EU共通特許と統一特許訴訟制度に関する2つの法案について採決を行う。

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現在EUで特許を取得する仕組みとしては、各国で出願して個別に審査を受ける方法と、欧州特許庁(EPO)に出願して「欧州特許」を取得する方法があるが、欧州特許も最終的な認可権限は各国の特許庁が握っているため、出願人は特許を取得したい国の制度に合わせてそれぞれ書類を用意しなければならず、翻訳などの費用が企業にとって大きな負担になっている。このためEUでは30年ほど前から域内共通の単一特許制度を創設する計画について議論が続いており、加盟国は昨年3月、使用言語をめぐって同構想に反対するイタリアとスペインを除く25カ国で、EU共通特許を先行導入することを正式に決めた。新システムでは1つの言語で出願すれば済むため手続きが大幅に簡素化され、認可されれば同制度に参加するすべてのEU加盟国で同じ効力を持つ特許を取得することができる。

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一方、欧州委員会は共通特許と共に単一特許制度を支えるもう1つの柱として、特許関連の紛争を一括処理する統一された訴訟制度の創設を提案していたが、統一特許裁判所をどこに置くかをめぐって英国、フランス、ドイツなどが対立。昨年12月の閣僚理事会では控訴裁判所をルクセンブルクに置き、調停センターと仲裁センターをそれぞれリスボンとリュブリャナに開設することで合意したものの、裁判所本体の設置場所をめぐって調整がつかず、結論を持ち越していた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ロンドンが医薬、生命科学、化学、農業などの分野を専門に扱う一方、ミュンヘンは主にエンジニアリング関連の事案と訴訟手続きに関する業務一般を受け持つ。各機関が担当する訴訟件数はパリ本部が全体の60%、ロンドンが30%、ミュンヘンが10%程度になる見通しだ。

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