2013/2/11

総合 –EUウオッチャー

EUが次期中期予算で合意、初の減額予算に

この記事の要約

EU加盟国は7、8日にブリュッセルで開いた首脳会議で、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について合意した。両日で計36時間の及んだ協議の末、予算圧縮を強く求める英国などに配慮し、現行中期予算(2007~13 […]

EU加盟国は7、8日にブリュッセルで開いた首脳会議で、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について合意した。両日で計36時間の及んだ協議の末、予算圧縮を強く求める英国などに配慮し、現行中期予算(2007~13年)から約1.6%削減することで決着。中期で初の減額予算となった。

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合意した予算は、前期の9,757億7,700万ユーロを下回る9,599億8,800万ユーロ。欧州委員会がまとめた原案と比べると約7%減となる。

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EUでは中期予算をめぐる協議が紛糾するのは常だが、今回はとくに難航を極めた。欧州の債務危機を受けて各国が財政緊縮を進める中、英国、オランダ、スウェーデンなどがEU予算の増額は受け入れられないとして大幅な減額を要求したのに対して、EUの農業補助金の大きな受益国であるフランスや、農業・インフラ整備向け補助金に依存する中東欧諸国が増額を主張して譲らず、激しく対立したためだ。

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昨年11月に開いた首脳会議では、現行中期予算を5%上回る1兆330億ユーロという欧州委の原案をめぐり、調整役のファンロンパイEU大統領(欧州理事会常任議長が妥協案として、9,720億ユーロまで削減することを提案した。しかし、英国、オランダ、スウェーデンなどは、なお削減が必要と主張。増額派の中東欧諸国や、農業補助金の削減に抵抗するフランスも受け入れを拒否し、協議が決裂。年内の成立を断念し、2月に再協議することとなった。

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今回の再協議では、増額反対派の急先鋒である英キャメロン首相が、EU離脱の是非を問う国民投票の実施をちらつかせて主張を曲げない方針を鮮明に打ち出したことから、双方が納得できる減額幅を探ることに焦点が絞られた。最終的に、ファンロンパイ大統領が前回の妥協案から約120億ユーロ削減した9,599億8,800万を新たな案として提示。英国などは、さらなる削減を勝ち取ったとして合意した。また、フランス、中東欧諸国側も、削減額は英国などが当初要求した額より小幅にとどまり、農業補助金向け予算は前回の妥協案から削られなかったことから矛を収め、ようやく決着した。

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主な減額対象となったのは、国境を越えた交通網の整備、エネルギー・通信プロジェクト向け予算や、EUの行政運営費など。一方、失業悪化対策として、若者の雇用を支援するため設置する特別基金には、予定通り60億ユーロを割り当てた。

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ファンロンパイ大統領は首脳会議後の記者会見で、「誰にとっても完璧な予算ではないであろうが、誰もが多く手にした」と述べ、双方の歩み寄りによる合意の意義を強調した。

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次期中期予算は大きなハードルを超えたが、成立には欧州議会の承認が必要。欧州議会は成長、雇用対策への積極的な財政出動が必要として、欧州委の原案を支持していた。主要4会派は共同声明で「合意は欧州経済の競争力を強めるどころか弱くする」と反対姿勢を示しており、なお紆余曲折が予想される。

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