2013/5/6

産業・貿易

EUがバングラの特恵関税見直し検討、ビル崩壊事故を受け

この記事の要約

EUは1日、バングラデシュの首都ダッカ郊外で起きたビル崩壊事故を受けて、同国の労働環境改善を促すため、適用している特恵関税の見直しなどを検討していることを明らかにした。500人を超える死者を出した崩落ビルにはイタリアの「 […]

EUは1日、バングラデシュの首都ダッカ郊外で起きたビル崩壊事故を受けて、同国の労働環境改善を促すため、適用している特恵関税の見直しなどを検討していることを明らかにした。500人を超える死者を出した崩落ビルにはイタリアの「ベネトン」やスペインの「マンゴ」など、欧米の有力ファッションブランドの製品を扱う複数の縫製工場が入居しており、今回の事故でバングラデシュの安価な労働力が世界のファッション産業を支えている現状が浮き彫りになっている。

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アシュトン外務・安全保障政策上級代表と欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は声明で、「EUは途上国におけるサプライチェーンの責任ある管理を促すため、一般特恵関税制度(GSP)の見直しを含めた適切な措置を検討している」と表明。バングラデシュ当局に対し、国内の工場を国際的な労働基準に適合させるよう迅速な対応を求める方針を明らかにした。

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一般特恵関税は途上国の人権、環境対策、労働条件の改善を促す目的で、工業製品や農産品の関税を減免する制度。バングラデシュは中国に次ぐ世界2位の繊維製品の輸出国で、年間輸出額190億ドルのうち欧州向けが約6割を占めている。同国は輸出のおよそ8割を衣料品産業に依存しており、EUが関税の引き上げなどに踏み切れば経済全体に影響が出る可能性もある。ただ、一般特恵関税を停止するにはEU加盟国と欧州議会の承認が必要で、実際に同措置がとられる可能性は低い。バングラデシュにとって最大の貿易相手であるEU市場へのアクセス制限を示唆することで、同国政府に労働条件の改善に向けた取り組みを促すのがEU側の狙いとみられる。

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バングラデシュではおよそ360万人が衣料品産業に従事しており、その大半を女性が占める。労働者の賃金は月平均38ドル程度とされる。警察は崩壊の危険を知りながら工場を操業させたとして、ビルの所有者や工場の経営者などを逮捕して調べを進めているが、ハシナ首相は米CNNとのインタビューで「海外のバイヤーにも事故の責任の一端がある」と語るなど、現地では劣悪な労働環境を放置して製品を発注してきた欧米のファッションブランドに対する風当たりも強まっている。

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