欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/26

総合 – 欧州経済ニュース

EUと旧ソ連6カ国首脳会議が閉幕、関係強化の具体的進展なし

この記事の要約

ラトビアの首都リガで開かれていたEUと旧ソ連6カ国による首脳会議は22日、2日間の日程を終え閉幕した。会議で採択された共同宣言では政治・経済的関係強化に向けたパートナーシップの枠組みの重要性などを再確認する一方、ウクライ […]

ラトビアの首都リガで開かれていたEUと旧ソ連6カ国による首脳会議は22日、2日間の日程を終え閉幕した。会議で採択された共同宣言では政治・経済的関係強化に向けたパートナーシップの枠組みの重要性などを再確認する一方、ウクライナ情勢をめぐり緊張関係が続くロシアに配慮し、旧ソ連諸国の将来のEU加盟について踏み込んだ言及を避けるなど、関係の一層の発展につながる具体的な展望は示されなかった。

EUはウクライナ、ジョージア(旧グルジア)、モルドバ、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシの旧ソ連6カ国と協力関係を強化する東方拡大戦略「東方パートナーシップ」の一環として首脳会議を2年毎に開催している。4回目となる今回の会議では、ロシアが軍事介入を続けるウクライナ情勢を背景に、EUと6カ国が足並みを揃えられるかが注目されていた。

会議では、治安・防衛面での対話や実務協力を強化することやロシアを迂回して天然ガスを欧州に運ぶ「南ガス回廊」構想で協力していくこと、EUとウクライナの自由貿易協定(FTA)を2016年1月に発効することなどが確認された。また、EUがウクライナの経済復興支援のため18億ユーロを供与することや、ウクライナ、ジョージア、モルドバの中小企業振興に今後10年に2億ユーロの資金提供を行うことで合意。さらに、ウクライナとジョージアの2カ国に対しては、年内に必要な改革を履行することを条件に、EUへの渡航者に対する査証免除措置を来年から実施する可能性が示唆された。

旧ソ連6カ国のうちEU加盟を希望するウクライナ、ジョージア、モルドバからは、今回の会議で将来の加盟への具体的な進展を期待する声が出ていた。しかし共同宣言は加盟への「希望を認識している」という、前回のビリニュス会議の共同宣言で使われた文言を繰り返すにとどまり、加盟の具体的時期への言及は見送られた。また、EUとウクライナはロシアによるクリミア半島編入を非難する内容を宣言に盛り込むことを目指したが、ロシアと良好な関係を維持するアルメニア、ベラルーシ、アゼルバイジャンが反対。最終的にはクリミア半島編入の違法性を「EUが再確認する」という文言が採用され、ロシアを強く非難する表現は盛り込まれなかった。EUとしては、ウクライナとの関係強化の動きがロシアを刺激しウクライナ危機を招く一因となったとの認識から、一定の配慮を見せた格好だ。

EUのトゥスク大統領は22日、「我々が約束したこととパートナーが期待することとの間には微妙な相違がある」と旧ソ連6カ国との間で意見の食い違いがあったことを認めたうえで今回の宣言は昨今の地政学的状況から考えて、「今達成できる精いっぱいのものだ」と述べた。