欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/26

総合 – 欧州経済ニュース

EUが密航船対策に軍事作戦、外相・国防相理で承認

この記事の要約

地中海で移民や難民を乗せた密航船の転覆事故が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている問題を受けて、EUは18日に外相・国防相理事会を開き、密航業者を取り締まるための軍事作戦を承認した。作戦の実行には国連安保理決議やリビア当局の同意 […]

地中海で移民や難民を乗せた密航船の転覆事故が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている問題を受けて、EUは18日に外相・国防相理事会を開き、密航業者を取り締まるための軍事作戦を承認した。作戦の実行には国連安保理決議やリビア当局の同意が必要で、EUは6月末の作戦開始を目指し調整を急ぐ。

作戦は三段階に分かれており、まず地中海での密航や人身売買の情報収集や監視を実施。状況を把握した上で、密航船の捜索や密航業者の摘発を行い、最終的には密航船の拿捕や破壊に踏み切る。作戦本部はローマに置き、イタリア海軍のクレデンディーノ少将が指揮官に就任する。この作戦には英仏独、イタリア、スペインなどが軍艦の提供を申し出ているほか、北大西洋条約機構(NATO)も協力を表明している。

モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は、「作戦の主眼は密航船の破壊ではなく、密航業者のビジネスモデルを崩壊させることにある」と強調。夏が近づくにつれて密航者の数は増えるとして、「可能な限り速やかに作戦を実行したい」と述べた。

密航船の拿捕や破壊が含まれる作戦の実行には、国連憲章第7章に基づく軍事的措置を認める安全保障理事会決議が必要で、英国が決議案をまとめる。ただ、ロシアや中国が反対する可能性もあり、状況は予断を許さない。また、リビア東部トブルクにある同国暫定政府の広報官は、「リビア水域内外の船舶に対処するための軍事的オプションは人道的ではない」として作戦に反対の意を表明しており、リビアの承諾を得ることも課題となる。

国連難民高等弁務官事務所によると、地中海の密航にともなう死者は、2015年だけで1,800人に上り、対策が急がれている。