欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/9/21

EU情報

予期せぬ技術トラブルは免責対象外、遅延時の補償めぐりKLM敗訴

この記事の要約

欧州司法裁判所は17日、域内の空港を発着する航空会社は予期しない技術的トラブルが原因で欠航や遅延が生じた場合、EU規則に沿って乗客からの補償請求に応じなければならないとする判決を言い渡した。現行ルールによると、いかなる措 […]

欧州司法裁判所は17日、域内の空港を発着する航空会社は予期しない技術的トラブルが原因で欠航や遅延が生じた場合、EU規則に沿って乗客からの補償請求に応じなければならないとする判決を言い渡した。現行ルールによると、いかなる措置を講じたとしても回避不可能な「特別な事情」で欠航や遅延が発生した場合、航空会社は補償義務を免除されるが、具体的にどのようなケースが免責事項に該当するかは明確にされていない。司法裁がたとえ予測できなかった場合でも技術面のトラブルは免責の理由にならないとの判断を示したことで、今後は航空会社に対する補償請求が大幅に増える可能性がある。

今回の事案は、エクアドルの首都キトからアムステルダムに向かうKLMオランダ航空の機体に不具合が見つかり、オランダから部品を取り寄せて交換する作業のため29時間の遅れが生じたケースの補償に関するもの。現行ルールは航空会社に対し、原則として3時間以上の遅延が発生した場合、飛行距離に応じて最大600ユーロの補償金を支払うよう義務づけている。しかし、KLMは飛行前の点検で不具合が見つかった2つの部品はいずれも耐用年数の範囲内であり、遅延は予測できない回避不可能なトラブルによるものだったと主張し、補償金の支払いを拒否。これを受けて同便の利用者がKLMを提訴し、オランダの裁判所が欧州裁に判断を仰いでいた。

欧州裁は判決で「予期しないトラブルは航空会社の業務につきものであり、常に不測の事態に備える必要がある。永遠に使用できる航空部品など存在しない」と指摘。KLMは出発地のキトに予備の部品を用意するなどの措置を講じるべきだったとし、今回の技術的トラブルは補償義務が免除される「特別な事情」にはあたらないと結論づけた。