2015/4/22

ポーランド

独コメルツ銀、ポーランド子会社からノウハウ吸収

この記事の要約

ドイツ金融大手のコメルツ銀行が、ポーランド子会社のMバンク(出資比率:70%)を通じて新しい銀行取引の形を模索している。オンライン取引を中心としたリテール銀行事業に注目し、ノウハウを吸収中だ。合同プロジェクトの形で実用化 […]

ドイツ金融大手のコメルツ銀行が、ポーランド子会社のMバンク(出資比率:70%)を通じて新しい銀行取引の形を模索している。オンライン取引を中心としたリテール銀行事業に注目し、ノウハウを吸収中だ。合同プロジェクトの形で実用化にも動き出した。

Mバンクは、コメルツ銀が買収したBREバンクの個人取引事業として2000年に設立された。白紙からの出発だったため、銀行事業をネット事業として構築することを決断した。これにより、既存システムにとらわれないオンライン仕様のサービスが実現した。

支店数は200店舗を数えるが、サービスの柱はオンラインだ。特に、スマホのユーザーに焦点を当てる。昨年末現在の顧客数は470万人で、このうち80万人がスマホ経由で取引している。遅くとも1年後には100万人を突破する勢いという。

保守的なドイツに比べると、Mバンクのオンラインサービスはずっと先を行っている。サイトはもともと、スマホでの利用を想定して作られ、操作しやすい。パターンの決まった銀行取引はすべて自動化している。

買い物時の支払いはスマホだけで問題ない。米ペイパルやクレジットカードといった決済サービスと契約していなくても大丈夫だ。残高が不足していればメッセージが届き、暗証番号の入力で即時1,000ズロチ(250ユーロ)まで借りられる。

友人同士で送金しあうのはメールをやり取りするのと同じぐらい簡単だ。一度、送金を受ければデータが保存され、いちいち入力する必要はない。メールを「返信」するのと似ている。

融資相談など「面談」が必要なときは、これが可能な支店(アドバイスセンター)に行くこともできるが、ビデオチャットでも用が済む。

支店展開も従来の「銀行」のイメージと異なる。営業が主眼の「ライト・ブランチ」はショッピングモールにあり、カラフルで明るい。大きなフラットスクリーンのほかタブレットPCを設置し、入店した人が自分で商品情報を検索できる仕組みだ。スマホを無料で充電できるほか、子ども向けにおもちゃの銀行端末も用意。飲料水は無料サービス、コーヒーなども自動販売機で買える。買い物客が一息つける場を提供して宣伝する戦略だ。

口座を開設した人がもらえる特典も、モールにある店舗の割引券とストレート。契約してからその店で買い物し、スマホで決済すれば割引分が口座に入金される仕組みとなっている。

顧客の残す決済履歴も他業者との提携に生かす。ガソリンスタンド業者との提携では、競合スタンドでばかり給油している銀行顧客に、提携スタンドの割引券を送信するといった具合だ。口座開設客の8割がデータ収集に同意するお国柄が強みとなっている。

移動通信最大手のオレンジとの合弁事業では、昨秋のスタートから6カ月で10万人の新規顧客を獲得した。オレンジは全国にMバンクをはるかに上回る900店舗を展開する。ここで販売されたスマホにはMバンクのアプリがプリインストールされており、すぐに銀行サービスが利用できる。

親会社のコメルツ銀もMバンクの経験を少しずつ取り入れていく方向だ。ビデオチャットによる銀行相談や、スマホ経由の消費者金融サービスといったプロジェクトをMバンクと共同で進めている。