欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/12/7

EU情報

欧州中銀が追加金融緩和決定、国債購入期間の延長など

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は3日に開いた定例政策理事会で、デフレ回避策として追加の金融緩和を決めた。国債などを買い取る量的緩和の実施期間を延長するほか、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイ […]

欧州中央銀行(ECB)は3日に開いた定例政策理事会で、デフレ回避策として追加の金融緩和を決めた。国債などを買い取る量的緩和の実施期間を延長するほか、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅を拡大する。ただ、同措置は予想を下回る内容で、市場では失望感が広がっている。

ECBは3月、ユーロ圏の国債や資産担保証券(ABS)、担保付き債券(カバードボンド)、EUの機関が発行する債券などを毎月600億ユーロ買い入れる量的緩和を開始した。市場に大量の資金を供給することで、金融機関による企業、家計への貸し出しを増やし、物価を押し上げる狙いがある。

同措置は16年9月までか、ユーロ圏のインフレ率が2%前後まで上昇するまで続けることになっていたが、ECBは今回の理事会で期間を17年3月まで6カ月延長することを決めた。また、地方自治体が発行する債券を買い取り対象に加える。

ECBの預金金利は14年6月からマイナスとなっている。民間銀行に余剰資金をECBに預けず、市場に供給することを促すのが目的で、預金に“ペナルティー”として手数料を徴収する形だ。理事会は金利のマイナス幅を0.2%から0.3%に拡大することを決定した。

ユーロ圏では量的緩和導入後も物価が上がりにくい状況が続き、11月のインフレ率は前年同月比0.1%と低水準にとどまっている(後続記事参照)。景気も緩やかに回復しているが、勢いに欠ける。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、ユーロ圏の予想インフレ率を1%とし、前回(9月)の1.1%から下方修正した。

ECBのドラギ総裁は10月、追加金融緩和を12月の理事会で検討する意向を表明していた。追加措置に対する市場の反応が冷ややかなのは、量的緩和が期間延長にとどまり、予想されていた買い取り規模拡大が盛り込まれなかったためだ。マイナス金利の拡大幅も予想の0.2ポイントを下回った。これを受けて、金融緩和拡充でユーロ安が進むとの市場の予測は裏切られ、同日のロンドン外国為替市場でユーロは対米ドルで急上昇。欧州の株価は下落した。また、ドイツ、フランス、イタリアなどユーロ圏主要国の長期国債は値下がりし、利回りが急上昇した。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、追加緩和が全会一致では決まらなかったことを明らかにしており、市場では理事会内の金融緩和に否定的な勢力の抵抗によって、思い切った措置に踏み切れなかったとの見方が出ている。