2010/3/1

総合 –EUウオッチャー

EUがイスラエルを旅券悪用で非難、ハマス幹部暗殺に関与の疑い

この記事の要約

EU外相理事会は22日、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの幹部、マフムード・マブフーフ司令官がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで暗殺された事件に関連して、名指しは避けながらもイスラエルを厳しく非難する内容の声明を […]

EU外相理事会は22日、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの幹部、マフムード・マブフーフ司令官がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで暗殺された事件に関連して、名指しは避けながらもイスラエルを厳しく非難する内容の声明を発表した。犯行グループがEU加盟国発給の旅券を悪用し、盗んだ個人情報に基づきクレジットカードを不正に取得・使用したことに「多大な懸念」を表明。EU市民の権利が侵害されたことは深刻な問題だと指摘した。また、イスラエル国家の存在を認めないハマスの幹部暗殺への関与は、「中東の和平と安定に寄与しない」と断じた。

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EUが声明で名指しを避けた背景には、イスラエルとの緊密な関係維持を求めるドイツ、イタリアをはじめ数カ国の意向があったとされる。現在のところ、イスラエルの関与を証明する具体的証拠が確認されていないことも考慮した。ただ、事件の前にイスラエルのネタニヤフ首相が対外特務機関モサドの幹部と面会し、暗殺を事前に承認していたとも伝えられており、ドバイ警察はモサドの関与をほぼ確実とみている。

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旅券を悪用された英独仏、アイルランドはすでにイスラエル大使を召喚して説明を求めるなど、事件は各国とイスラエルの外交問題にも発展している。しかし、イスラエルのリーベルマン外相は自国の関与を示す証拠は何もないと主張する一方で、関与を明確に否定することもせず、「(EU外相らは)ジェームズ・ボンドの映画を見すぎだ」などと発言。EUとの外交関係に長期的な影響をもたらすものではないとみて、全面的な危機に陥る可能性はないと踏んでいるもようだ。

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暗殺されたマブフーフ司令官は、パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスの軍事部門創設者で、ガザへの武器密輸に関与していた人物。1月20日にドバイのホテルで死亡しているのが発見された。容疑者らが使用した旅券はEUの4カ国のほかオーストラリアが発給したもので、偽造されたか、本人になりすまして別人が取得したとみられる。ドバイ警察がすでに、容疑者とみられる外国人26人の写真と氏名を二度にわたって公開しており、先に特定した11人は国際刑事警察機構が国際手配済み。容疑者のうち7人の氏名は実在するイスラエル在住の英国人などと一致することが確認されているほか、イスラエルに住む英国人男性6人が、個人情報を盗まれたと訴え出ている。また、容疑者のうち14人が航空運賃や宿泊代の支払いに使用したクレジットカードも特定されており、記載されていた8人の氏名も、実在のイスラエル居住者ものと同じであることが分かっている。クレジットカードの大半は、米国の同一の銀行が発行したものだった。

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