2010/4/26

環境・通信・その他

欧州委がACTA条文案を公開、「スリーストライク」には触れず

この記事の要約

欧州委員会は21日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」の条文案を公開した。市民団体などの間で懸念が広がっていたインターネット上の著作権侵害対策として、違法ダウンロードの […]

欧州委員会は21日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」の条文案を公開した。市民団体などの間で懸念が広がっていたインターネット上の著作権侵害対策として、違法ダウンロードの常習者に対してネット接続を切断するなど厳しい措置をとることを締約国に求めたり、合法的なジェネリック医薬品の国境を越えた流通を制限する内容などは盛り込まれていない。関係国は年内の交渉妥結を目指しており、条文案の公開が最終合意に向けた議論の進展につながると期待を寄せている。

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ACTAは知的財産の権利者やビジネスに重大な経済的損失をもたらす模倣品や海賊版の増加に歯止めをかけるため、日本と米国が2006年に提唱した構想で、08年6月に交渉が正式にスタートした。現在は日・米・EUのほか、カナダ、スイス、豪州、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、シンガポールの11カ国・地域が交渉に参加している。

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ACTAは効率的な知的財産権の執行のための国際協力に主眼を置いており、知的財産に関連した既存の法的枠組みに重大な変更をもたらすものではない。具体的には◇知的財産ルールに対する違反が立証された場合の民事上の執行手続き◇刑事上の手続きおよび罰則◇税関やその他の当局がとることのできる国境措置(模倣品や海賊版の押収など)◇デジタル環境における知的財産権の執行(たとえばネット上の著作権侵害の防止に向けたインターネット接続業者の役割と責任)――などについて、国際的な基準を定めることを目指している。

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ACTAはTRIPS協定(WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を土台にしているため、貿易交渉の慣例に従いこれまで条文案の公開が見送られてきた。しかし、情報公開を求める市民団体などの強い働きかけを受け、欧州議会は先月、条文案の公開を求める決議案を採択。欧州委はこれを受けて情報公開に消極的な米国などの説得にあたり、今月12-16日にニュージーランドで開かれた第8回関係国会議で参加国が条文案の公開で合意した。

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欧州委は声明で、ACTAはEUが定める知的財産分野の既存ルールに完全に整合する内容になると強調。違法ダウンロードをくり返すユーザーに対し、3回目の違反が発覚した時点でネット接続を切断する「スリーストライク」などの措置を政府に求める提案は、いずれの国からも出ていないと説明している。

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