2010/6/21

総合 –EUウオッチャー

アイスランドと加盟交渉開始、EUが首脳会議で合意

この記事の要約

EUは17日の首脳会議で、アイスランドと加盟交渉を開始することで合意した。アイスランドは昨年7月にEU加盟を申請したばかり。異例の早さでの交渉開始となった。正式加盟に向けては、英、オランダへの預金返済問題の解決、漁業をめ […]

EUは17日の首脳会議で、アイスランドと加盟交渉を開始することで合意した。アイスランドは昨年7月にEU加盟を申請したばかり。異例の早さでの交渉開始となった。正式加盟に向けては、英、オランダへの預金返済問題の解決、漁業をめぐる交渉の妥結が大きな課題となる。

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アイスランドはこれまで経済の柱である漁業での主権を維持することを主な理由に、EU加盟を見送ってきた。しかし、金融危機で通貨が暴落するなど大きな打撃を受けたことを契機に、孤立政策見直しの機運が急速に高まった。昨年4月の総選挙で誕生した新政権は7月にEU加盟を申請していた。

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すでにアイスランドはEU加盟国を主体とする欧州経済領域(EEA)に参加し、EU経済に事実上組み込まれている。欧州内での出入国審査を廃止する「シェンゲン協定」にも参加し、市民は大部分のEU加盟国を入国審査なしで旅行できる状況にある。さらに、国内法とEU法の調和が進んでおり、すでに加盟基準の多くを満たしているとされる。このため、加盟に向けた障害は中東欧、バルカン諸国、トルコと比べてはるかに少なく、欧州委員会は2月に加盟交渉開始を加盟国に勧告。加盟国は14日の外相理事会で交渉開始を承認していた。

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アイスランドにとって加盟の大きな障害となっているのが、08年に破たんした大手銀行ランズバンキのネット銀行「アイスセーブ」の外国人口座が閉鎖されたことで、34万人に上る英、オランダ人預金者の53億ドルの資金が凍結されている問題。肩代わりして国内の預金者に払い戻した英、オランダ政府は、アイスランドに返済を求めているが、同国は3月に実施した国民投票で返済法案を否決した。

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英、オランダは同問題とEU加盟を切り離し、交渉開始を受け入れたものの、これが解決されるまで正式加盟を認めない方針だ。EUも加盟の条件として、オランダに同問題の解決を呼びかけた。

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35分野に上る加盟交渉では、漁業関連が最大の難関となる。アイスランドはEUより厳しく漁業資源を管理しならが漁業水域を保全してきたが、EUに加盟すると共通漁業政策に組み込まれ、統制権を失うことになるためだ。同国で行われている捕鯨も、EUのルールでは禁止されている。加盟交渉では、これらの問題をめぐり、特例扱いを求めるアイスランドとEUの激しい攻防戦が展開されそうだ。

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