2010/6/21

総合 –EUウオッチャー

仏が年金受給開始を62歳に引き上げ、財政再建の一環で改革案発表

この記事の要約

フランス政府は17日、年金受給開始の目安となる法定退職年齢を60歳から62歳に引き上げることを柱とする年金改革案を発表した。これは政府が進める財政緊縮策の一環で、年金基金の赤字を圧縮するとともに財政赤字を削減する。すでに […]

フランス政府は17日、年金受給開始の目安となる法定退職年齢を60歳から62歳に引き上げることを柱とする年金改革案を発表した。これは政府が進める財政緊縮策の一環で、年金基金の赤字を圧縮するとともに財政赤字を削減する。すでに政府は向こう3年間で450億ユーロの歳出を削減する計画を明らかにしており、年金改革と併せて2013年に財政赤字を対国内総生産(GDP)比で3%以内とする目標の達成を目指す。

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改革案によれば、年金積立年数を延長するとともに法定退職年齢を2018年までに62歳に引き上げる。また高額所得者の所得税率を1%引き上げて41%とするほか、キャピタルゲインや配当金、ストックオプションへの課税を強化して年金基金の赤字を補てんする。フランスではミッテラン社会党政権により1982年に法定退職年齢が65歳から60歳に引き下げられて以来、年齢引き上げの議論はタブーとなっていた。

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政府高官によれば、改革案により2020年までに対GDP比で1.9%の財政赤字削減につながり、2011年から2020年までの節減規模は合わせて2,200億ユーロに上るという。年金改革を進めないと年金基金の赤字は2020年には450億ユーロとなり、2050年には720億~1,150億ユーロに達するとの予測も出ていた。政府はこうした改革が金融市場に安心感を与え、最高水準にあるフランスのソブリン債の格付けを維持できると考えている。

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今回明らかにされた内容は改革法案にまとめられ、9月には議会で審議に入る予定だが、労働組合や野党第1党の社会党は反発しており、成立は難航が予想されている。すでに国内の主要6労組は6月24日の全国ストを呼び掛けている。

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しかし、ブルト労働相はテレビのインタビューで「法定退職年齢は非常に重大な問題であり、後戻りしない」として、社会的にも容認されるとの見通しを示している。一方、投資家や産業界からは法定退職年齢の引き上げを63歳でなく62歳に抑えたことに対して、失望感も出ている。フランスの法定退職年齢はEUの中では最も低い部類に入り、2005年のデータによれば実際の平均退職年齢も男性で58.5歳、女性で59.1歳となっており、EU平均の男女とも61.4歳を下回っている。

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