2010/9/13

総合 –EUウオッチャー

EU財務相理、財政相互監視・金融監督機関新設で合意

この記事の要約

EUは7日にブリュッセルで開いた財務相理事会で、ギリシャ危機の再発防止に向けた財政規律強化策の一環として、加盟国で適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックするシステムを2011年から導入することで合意し […]

EUは7日にブリュッセルで開いた財務相理事会で、ギリシャ危機の再発防止に向けた財政規律強化策の一環として、加盟国で適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックするシステムを2011年から導入することで合意した。また、金融危機の再発防止に向けた金融監督制度改革案の内容で合意し、国境を越えて銀行・保険・証券の各セクターをEUレベルで管轄する監督機関などの新設を決めた。一方、銀行に特別税を課し、将来の破たんに備えた基金を創設する案については合意に至らず、結論を先送りした。

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財政の相互監視では、来年から各国が議会での予算審議に先立って中期予算計画をEUに提出し、チェックを受けることになる。毎年3月に欧州委員会がまとめる経済環境に関する報告書ならびに財政への助言に基づき、各国は4月に中期予算計画を提出。これを6、7月にEU首脳会議と財務相理事会が審査し、問題があれば助言を行う。これを参考に各国は次年度の予算を編成することになる。

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同制度をめぐっては、英国が予算編成へのEUの介入を嫌い、難色を示していたが、審査対象を次年度予算ではなく中期予算計画とすることで妥協に応じた。

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同じく合意された金融監督制度改革では、銀行・保険・証券市場を監視するセクター別の委員会に代わり、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)、欧州証券監督機構(ESMA)が新設される。3機関はそれぞれロンドン、フランクフルト、パリに本部を置き、国境を越えて活動する大手金融機関の監視を行う。各機関はEU各国の当局者間の調整や、EUルールが適正に運用されるための解釈や基準の策定といった機能を担うほか、問題がある金融機関に対して対応を直接指示する権限を持つ。従来のセクター別委員会は欧州委に助言を行う諮問機関の位置付けにとどまり、各国当局が協調して金融市場を監督するシステムは整っていなかったが、今後は監督体制を一元化して EUレベルでのリスク監視および危機対応を強化する。

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また、金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」も設置される。ESRBは特定の国や金融機関の抱えるリスクが欧州全体に波及する危険を分析し、必要に応じて各国当局に警告を発し、対応策を勧告する。ESRBは欧州各国の中央銀行を中心に構成されるが、欧州議会の強い働きかけで設立から5年間はECB総裁が議長を務めることになった。

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この新機関設立は欧州議会の承認が必要となるが、前週に加盟国都と議会の代表が同内容で合意していることから、議会での採択は確実。来年1月から始動する見通しだ。

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一方、銀行税は金融危機再発策の一環として欧州委員会が5月に提案したもので、銀行の経営が行き詰まった場合に必要となる破たん処理などの資金を確保しておくというもの。銀行が破たんしても納税者に負担を強いることなく、円滑に処理を進め、金融市場の安定を保つのが狙いだ。

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これについては、EUは銀行税を財源にした「銀行清算基金」を創設し、破たん処理に活用することを想定しており、すでにドイツは単独で同構想を進めている。これに対して英国は、銀行税の用途を限定せず、国家会計に組み入れて財源不足を補うことを意図しており、調整が難航している。財務相理事会は30日、10月1日に非公式会合を開き、同問題を再協議する。

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