2010/10/18

産業・貿易

「ビッグ4」の法定監査寡占化にメス、欧州委が改革案策定へ

この記事の要約

欧州委員会は13日、金融危機の再発防止に向けた規制改革の一環として、域内の企業に対する法定監査の見直しに着手した。大手会計事務所による寡占状態が財務情報に対する信頼性の低下を招いているとの分析に基づき、監査業務における競 […]

欧州委員会は13日、金融危機の再発防止に向けた規制改革の一環として、域内の企業に対する法定監査の見直しに着手した。大手会計事務所による寡占状態が財務情報に対する信頼性の低下を招いているとの分析に基づき、監査業務における競争促進を図るための具体策を検討する。欧州委は12月8日までの期間、監査法人の独立性や監督機関の権限などについて各方面から意見を募集し、来年中に改革案をまとめる。

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企業に対する法定監査ではプライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト、アーンストアンドヤング(Y&G)、KPMGの4大会計事務所が世界市場を支配している。欧州委によると、EU域内の上場企業に対する監査業務でも、これら「ビッグ4」の占めるシェアが件数ベースで全体の70%を超え、英国の代表的な株価指数であるFTSE 100の構成銘柄ではこの割合が99%に上る。また、企業側にとっては同業他社と同じ監査法人を使いたくない事情もあり、選択肢はほとんどないのが実情だ。欧州委はこうした現状を改善し、中小の監査法人が公正な条件で競争できる環境を整えることで、財務情報に対する投資家の信頼を高めて金融市場の安定化につなげることができると指摘している。

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欧州委がまとめた文書によると、制度改革に向けた議論では◇監査業務とコンサルティング業務の分離および監査法人の独立性◇大手会計事務所による寡占化の弊害◇各国の監督機関の役割と権限◇EUの定める基準を満たした監査法人にすべての加盟国での活動を認める「パスポート制度」の導入――などが中心的な論点となる。 欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は声明で「企業の健全性を示す正確な財務情報は市場における信頼性の柱となるものだ。監査法人は極めて重要な役割を担っており、完全に独立した企業監査が求められる。このため徹底した議論を通じて金融危機で浮き彫りになった監査制度の問題点を是正する必要がある」と強調した。

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