欧州議会は16日の本会議で、EUの政策実施における欧州委員会の権限強化を柱とする規則案を賛成多数で可決した。EU規則や指令などの実施に向けた具体策の策定段階で、欧州委が加盟国の代表で構成する専門委員会に意見を求める「コミトロジー」手続きが簡素化され、迅速でより透明な意思決定が可能になる。EU加盟国はすでに規則案を承認しており、2011年3月1日付で新制度に移行する。
\EUでは昨年12月に発効したリスボン条約に基づき、意思決定プロセスにさまざまな修正が加えられている。欧州委はその一環として、今年3月にコミトロジー手続きの変更に関する規則案を提示した。これによると、政策実施のためのルール策定にあたり、欧州委が各国の代表から成るコミトロジー委員会を開いて採択を行うプロセスは今後も維持されるが、閣僚理事会の介入は排除される。これまでは加盟国政府の意向で欧州委の提案が否決されるケースも多く、コミトロジー手続きの透明性が十分に確保されていないとの批判があった。新システムではコミトロジー委員会による特定多数決で否決されない限り、欧州委の提案する実施ルールがそのまま適用される。
\新規則の導入により、従来は加盟国に最終決定権があった貿易分野などの実施措置が通常の手続きで決定されるようになる。具体的には反ダンピング関税や相殺関税の発動などについて、欧州委に決定権が与えられる。ただし、複数国を対象とするセーフガード措置の発動に関しては、コミトロジー委員会による特定多数決で過半数の支持を得る必要がある。
\一方、コミトロジー手続きの透明性を高めるため、欧州委がコミトロジー委員会に提出した資料はすべて欧州議会と閣僚理事会に開示される。両機関は開示された資料を基に欧州委による権限の逸脱がないかをチェックし、問題がある場合は実施措置の見直しを求めることができる。
\欧州委は新規則の導入により、EU法を的確に実施するための確固とした基礎が確立され、より透明で効果的な意思決定が可能になると説明している。シェフチョヴィチ副委員長(機関間関係・行政担当)は声明で「リスボン条約の発効から1年、法案提出から9カ月という短期間に、欧州委による政策の実施に重大な影響を及ぼす意思決定プロセスについて、欧州議会と加盟国の間で合意が形成されたことを歓迎する」とコメントしている。
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