2011/1/3

総合 –EUウオッチャー

ハンガリーでメディア法案可決、EU新議長国の報道規制強化が波紋

この記事の要約

ハンガリー議会は12月20日、報道監視を強化する「メディア法案」を賛成多数で可決した。大統領の署名を経て年明けにも施行される見通しだが、欧州委員会は報道の自由を侵害する恐れがあり、EU法に抵触する可能性があると警告するな […]

ハンガリー議会は12月20日、報道監視を強化する「メディア法案」を賛成多数で可決した。大統領の署名を経て年明けにも施行される見通しだが、欧州委員会は報道の自由を侵害する恐れがあり、EU法に抵触する可能性があると警告するなど、EU内では1月から半年間にわたり議長国を務めるハンガリーへの批判が急速に高まっている。ハンガリー政府は技術の進歩によって形骸化した既存ルールを実情に合わせるのが新法の目的と説明しているが、実際には報道規制を通じて政権基盤を強固にする狙いがあるとみられている。

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新法によると、新たに創設されるメディア監督機関「国家メディア通信庁(NMHH)」が新聞、テレビ、インターネットなど各種メディアの報道内容を監視し、政治的に中立でないと判断されたメディアは最高73万ユーロの罰金を科される。また、NMHHは国の安全保障に関わる報道について、記者に情報源の開示を求める権限を持つ。新法には報道が「バランスを欠いた」内容かどうかを判断するための基準が明記されていないうえ、NMHHのメンバー5人は全員がオルバン首相率いる中道右派与党フィデスの関係者であるため、同党や政権に不利な報道が規制される恐れがある。

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欧州委のクルース副委員長(デジタルアジェンダ担当)は23日、ハンガリーのナブラチッチ副首相(行政・司法相兼任)に書簡を送り、報道の自由を定めたEU法との整合性を検証する必要があるとして、速やかに新法の条文を提出するよう求めた。欧州委の関係者によると、クルース副委員長は新たなメディア規制によって報道の自由が脅かされるとの懸念を抱いており、NMHHの独立性も疑問視している。さらに他のEU諸国のメディアに規制が及ぶ可能性についてもハンガリー側に説明を求めているもようだ。

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EU加盟国もオルバン政権に対する批判を強めている。ルクセンブルクのアッセルボルン外相は「ハンガリーの報道規制は民主主義に対する直接的な脅威であり、明らかにEU条約に反する」と述べ、欧州委に対しただちに適切な措置を講じるよう要求。「ハンガリーが(議長国として)EUを率いるのにふさわしい国かどうか疑問だ」と付け加えた。

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