2011/4/18

産業・貿易

欧州委が「欧州単一市場法」最終案を発表、中小企業の資金調達など優先課題に

この記事の要約

欧州委員会は13日、EU域内における人・モノ・サービス・資本の自由な移動を可能にする単一市場の完全な実現に向け、EUが取り組むべき優先課題をまとめた「欧州単一市場法」の最終案を発表した。欧州委は昨年10月、EU経済の競争 […]

欧州委員会は13日、EU域内における人・モノ・サービス・資本の自由な移動を可能にする単一市場の完全な実現に向け、EUが取り組むべき優先課題をまとめた「欧州単一市場法」の最終案を発表した。欧州委は昨年10月、EU経済の競争力を強化して成長を維持するため、単一市場の拡大・深化に向けた50の施策を打ち出したが、各方面から寄せられた意見を踏まえて中小企業に対する資金調達支援、専門職の域内移動促進、公共調達ルールの見直しなど12項目に絞り込んだ。欧州議会と加盟国の承認を経て2012年末までの実施を目指す。

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欧州委のバローゾ委員長は声明で「単一市場が常にEUの発展と繁栄を牽引してきたが、厳しい経済状況の中で成長を促進し、雇用を創出するため、これまで以上に域内統合の重要性が増している。法案に盛り込んだ12の施策によって単一市場がさらに深化し、域内のすべての企業、労働者、消費者に大きな恩恵をもたらすだろう」と述べた。

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欧州委はまず、域内で2,000万社を超える中小企業の多くが資金不足で設備投資や製品開発、人材確保などに苦慮している現状を踏まえ、こうした企業が円滑に資金調達できる仕組みを整える必要があると指摘。域内に拠点を置くベンチャーキャピタルが将来有望な中小企業に国境を越えて資金提供できるよう、早急に共通ルールを策定する方針を示している。

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労働力の流動性に関しては、国ごとに異なる制度や法律によってとりわけ専門職の域内移動が妨げられていると分析。加盟国間で専門資格の相互認定を進め、域内共通の身分証を発行するなどして高い専門知識を持つ人材が国境を越えて活動できる環境を整えるとしている。

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さらに欧州委は域内総生産の18%を占める公共調達について、各国の公的機関は環境への配慮や社会的責任などの要素を十分に考慮して、革新的なサービスや製品を市民に提供しなければならないと指摘。中小企業による公共調達市場への参入を促して公正な競争を確保するため、現行ルールを見直して手続きの簡素化を図る方針を示している。

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単一市場法の最終案にはこのほか、EU共通特許制度の導入、サービス産業における標準化の促進、エネルギーおよび輸送分野のネットワーク強化、エネルギー税指令の改正を柱とする税制改革、会計ルールの簡素化、社会起業家の育成などが盛り込まれている。

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