2011/7/18

総合 –EUウオッチャー

銀行ストレステストで8行「不合格」、資本不足「予備軍」も16行に

この記事の要約

欧州銀行監督機構(EBA)は15日、EU域内の主要91行を対象としたストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。スペインやギリシャなどの8行が資本不足で「不合格」となり、資本不足額は合計25億ユーロとされた。EBAは8 […]

欧州銀行監督機構(EBA)は15日、EU域内の主要91行を対象としたストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。スペインやギリシャなどの8行が資本不足で「不合格」となり、資本不足額は合計25億ユーロとされた。EBAは8行に対して年内に資本増強を行うよう求めており、自力での資本調達が困難な場合は各国政府が公的資金を注入することになる。

\

ギリシャの債務不履行(デフォルト)に対する懸念が強まり、イタリアやスペインの国債価格が急落するなか、EUは金融市場の透明性を高めて信用回復を図りたい考えだが、不合格となった銀行数、資金不足額とも事前予想(最大15行、100億ユーロ)を下回り、昨年7月の前回テストと同様、審査基準の甘さを指摘する声が出ている。

\

EBAに資本不足と認定されたのはスペインの貯蓄銀行など5行、ギリシャの農業銀行など2行、さらにオーストリア4位行のフォルクスバンケン。今回のテストでは20011年にユーロ圏のGDPが0.5%のマイナス成長となり、欧州の株式相場が15%下落するといったシナリオで、狭義の中核的自己資本(コアTier1)5%を維持することが合格の条件とされた。2010年末時点では91行のうち20行が基準を満たしていなかったが、今年1-4月に域内全体で総額500億ユーロの資本増強が行われた結果、不合格行は8行にとどまった。

\

ただし、合格した銀行のうちスペイン、ギリシャ、ポルトガルなどの計16行はコアTier1比率が6%を下回っている。EBAはこれら 16行について「資本不足に近い」と指摘し、来年4月までに増資やリストラなどを通じて資本基盤を強化するよう求めている。

\

昨年のストレステストではアイルランドの銀行が合格と認定された直後に資金難に陥り、審査基準の甘さが批判の的になった。今回はギリシャの債務問題が深刻化している状況を踏まえ、ソブリン債保有に関連したリスクも審査基準に織り込まれた。ただ、ロイター通信によると、ギリシャ国債に関して市場では最大50%の価値下落が予想されているのに対し、テストのシナリオでは下落率がおよそ15%に設定され、ソブリン債デフォルト(債務不履行)は想定されていない。このためアナリストらの間では「ストレスのかけ方が甘すぎて審査の価値が損なわれている」といった声が出ている。

\

さらに審査方法をめぐるEBAと銀行側との対立も浮き彫りになった。たとえばコアTier1比率が4.5%で不合格となったオーストリアのフォルクスバンケンの場合、部門売却などを通じた資本増強策がEBAの審査に反映されず、およそ3分の1の資本が査定対象として認定されなかった。同行はこうした資本が考慮されていれば合格基準を満たすことができたと主張している。

\