2011/8/1

競争法

ロイヤル・メールへの公的支援で調査、年金債務引き受け焦点に

この記事の要約

欧州委員会は7月29日、英国の国営郵便会社ロイヤル・メールの民営化計画に関連した公的支援策について、EU国家補助規定に基づく本格調査に着手したと発表した。英政府は2012年の民営化に向け、ロイヤル・メールが抱える約80億 […]

欧州委員会は7月29日、英国の国営郵便会社ロイヤル・メールの民営化計画に関連した公的支援策について、EU国家補助規定に基づく本格調査に着手したと発表した。英政府は2012年の民営化に向け、ロイヤル・メールが抱える約80億ポンド(約90億ユーロ)の年金債務と17億ポンド(19億ユーロ)の負債を引き受ける方針を打ち出し、欧州委に承認を求めていた。

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英政府が株式100%を保有するロイヤル・メールは新規業者の参入や電子メールの利用拡大などによって収益が圧迫されており、民営化で生き残りを図る道を選んだ。6月に成立した民営化法案によると、政府は株式の最大90%を売却し、少なくとも10%をロイヤル・メールの従業員に割り当てる計画で、売却先を模索するうえで年金債務と負債の処理が急務となっている。英政府は同社が抱える年金問題について、郵便市場が自由化される前の独占体制における非効率な運用によって雪だるま式に赤字が膨らんだと説明。仏郵政公社(ラ・ポスト)の年金債務を政府が肩代わりする救済策を欧州委が認可したケースを引き合いに出して、ロイヤル・メールに対する公的支援はEUの国家補助規定に沿った措置だと主張している。

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これに対し欧州委は、ロイヤル・メールの債務が国営独占企業として運営されていた時代の負の遺産だという理由で公的支援の条件が緩和されるとの主張は「説得力に欠ける」と指摘。民営化計画には「政府の介入に伴う競争阻害のリスクを軽減するための適切な措置」や「再建コストの株主負担」が十分に盛り込まれていないとの見方を示している。

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欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「英国の郵便市場を改革する必要性は十分に理解している。しかしながら、政府の支援策によってロイヤル・メールが不当に優遇され、公正な競争が阻害されることがあってはならない」と強調している。

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