2012/10/15

環境・通信・その他

航空管制システムの統合計画に遅れ、欧州委が違反国への制裁検討

この記事の要約

欧州委員会のカラス副委員長(運輸担当)は11日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指す「単一欧州空域」構想を推進するため、管制空域の再編に向けた取り組みが不十分な加盟国に制裁を科す方向で検討していることを明らか […]

欧州委員会のカラス副委員長(運輸担当)は11日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指す「単一欧州空域」構想を推進するため、管制空域の再編に向けた取り組みが不十分な加盟国に制裁を科す方向で検討していることを明らかにした。EU加盟国は航空管制の効率化に向けた統合計画の第1段階として、今年末までに域内の管制空域を9つのブロックに再編することなどで合意しているが、依然として多くの国で管制業務の独占体制が維持されており、計画は大幅に遅れているのが実情。欧州委は法的枠組みを強化するため2013年春をめどに新たな法案を提示する一方、履行義務を果たしていない国に対する違反手続きを含めたあらゆる政策を動員して計画を推進する方針を示している。

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欧州では国ごとに細分化された航空交通管制に従って飛行ルートが設定されているため、EU域内を結ぶ路線の飛行距離は最短ルートに比べて平均42キロ長く、燃料費や温室効果ガス排出量の増大を招いている。欧州委の試算によると、域内の航空管制システムが統合されて最短ルートでの飛行が実現された場合、輸送能力は全体で現在の3倍に拡大する一方、年間50億ユーロのコスト削減と二酸化炭素(CO2)排出量の10%削減が可能とされる。

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EU加盟国は航空輸送の需要拡大に対応するため、2009年に単一欧州空域の実現に向けた法的枠組み(単一欧州空域Ⅱ)で合意。パッケージは◇12年末までに27カ国に拠点を置く60の航空管制センターが管理するのに合わせて650の空域を9つのブロックに再編する◇空港の安全対策と航空管制業務に関する共通ルールを導入して欧州航空安全庁(EASA)が順守状況を監視する◇最新のレーダー技術を利用した単一欧州航空交通管理(SESAR)プログラムの導入を進める――などを柱とする内容になっている。しかし、加盟国の動きは鈍く、カラス副委員長は1年前の段階で、目標達成に向けて計画を実行している国はベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、リトアニアの5カ国にとどまると警告していた。

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カラス副委員長はキプロスで開かれた「単一欧州空域 ― 行動を起こすべき時」と題した会議で講演を行い、「シングルスカイ構想は当初の計画から大幅に遅れており、航空管制をめぐる根本的な問題は10年以上前からほとんど進展していない」と指摘。「この段階ではEUルールに対する違反手続きが必要のようにみえる」と述べ、各国における進捗状況を調査したうえで取り組みが遅れている国に対しては制裁を視野に入れた措置を講じる意向を示した。

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