2012/12/27

競争法

電子書籍販売めぐる和解案を承認、エージェンシー・モデル破棄など

この記事の要約

欧州委員会はこのほど、米アップルと欧米の大手出版社が結んだ電子書籍の販売契約がEU競争法に違反する疑いがあるとして調査を進めていた問題で、アップルと出版大手4社が提示した和解案を受け入れる方針を明らかにした。これにより、 […]

欧州委員会はこのほど、米アップルと欧米の大手出版社が結んだ電子書籍の販売契約がEU競争法に違反する疑いがあるとして調査を進めていた問題で、アップルと出版大手4社が提示した和解案を受け入れる方針を明らかにした。これにより、5社に対する調査はただちに打ち切られる。和解案にはアマゾンなどの小売業者が今後2年間にわたり、販売価格を自由に設定できるようにすることなどが盛り込まれており、欧州委は電子書籍市場で公正な競争が確保されると判断した。

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欧州委が問題にしていたのは、アップルがタブレット型端末「iPad」の発売に合わせて電子書籍のオンライン配信サービス「iブックストア」を立ち上げた際に導入した「エージェンシー・モデル」と呼ばれる契約スタイルと、書籍がiブックストアより低い価格で販売された場合、出版社に卸価格を引き下げることを義務付けた「most-favoured-customer(MFC)」と呼ばれる条項。従来は出版社が卸価格を設定し、書店が小売価格を決める「ホールセール・モデル」が一般的だったが、アップルとの契約では出版社が電子書籍の小売価格を自由に設定し、売り上げの70%を出版社、30%をアップルが受け取る仕組みになっている。エージェンシー・モデルでは小売業者に価格決定権はないが、人気作品の販売権を得るため出版社との契約で同様のモデルを採用する動きが広がっており、欧州委は電子書籍ストア間の競争が不当に妨げられているとの見方を強めていた。

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欧州委の調査対象となった出版社は仏アシェット・リーブル(親会社はラガルデール)、米ハーパー・コリンズ(同ニューズ・コーポレーション)、米サイモン&シュスター(同CBSコーポレーション)、英ペンギン(同ピアソン・グループ)、独フェアラークグルッペ・ゲオルク・フォン・ホルツブリンク(英マクミラン・パブリッシャーズなどの親会社)の5社。このうちペンギンを除く4社とアップルは制裁を回避するため、早い段階で欧州委に和解案を提示。欧州委はライバル会社から意見を聞くなど、和解案が反競争的商慣行の是正につながるかどうかについて検討を進めていた。

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和解案には◇アップルと出版社はただちにエージェンシー・モデルを破棄する◇向こう2年間にわたり、小売業者が自由に電子書籍の販売価格を設定できるようにする◇アップルと出版社はMFC条項を5年間凍結する――が盛り込まれている。

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なお、欧州委によると、ペンギンも個別に和解案を提示しており、現在、問題解決に向けた話し合いが行われているという。

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