2014/1/20

産業・貿易

加盟国と欧州議会がMiFID改正案で合意、高頻度取引の規制など柱

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会の3者は14日、より安全で安定的な金融システムの構築を目的とする「金融商品市場指令(MiFID)」の改正案の内容で基本合意した。市場の透明性向上と投資家保護の強化を目的として、これまで規制 […]

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会の3者は14日、より安全で安定的な金融システムの構築を目的とする「金融商品市場指令(MiFID)」の改正案の内容で基本合意した。市場の透明性向上と投資家保護の強化を目的として、これまで規制の枠外にあった債権などの投資商品や私的プラットフォーム上での取引を幅広く規制することや、専用のプログラムを用いて自動的に発注を繰り返す高頻度取引(HFT)に対する規制などを柱とする内容。閣僚理事会と欧州議会の承認を経て2016年後半の新ルール導入が見込まれる。

2007年11月に施行されたMiFIDは、資本市場および投資サービスのための包括的な枠組みと投資家保護のための規則を提供してきた。しかし、規制対象が限定されているため市場の透明性が十分に確保されず、これが金融危機を招く一因になったと考えられるようになった。欧州委はこうした反省に立って11年10月に現行指令の改正案(いわゆる「MiFID II」)をまとめ、加盟国と欧州議会で検討が進められていた。MiFIDの見直しは金融危機後にEUが進めている金融規制改革の重要な柱の1つで、金融市場の構造変化への対応、市場の透明性確保、コモディティ・デリバティブ(商品先物)市場の監視強化、投資家保護の強化に主眼が置かれている。

現行指令は取引プラットフォームを「規制市場(Regulated Market)」と「多角的取引施設(MTF)」に分類し、取引情報などの開示を義務づけているが、規制市場外での取引や、債権や商品デリバティブなどは規制の対象になっていない。MiFID IIでは規制市場やMTFで取引される株式以外の商品についても情報開示義務の対象となるほか、規制市場とMTF以外の私的な取引プラットフォーム全般をカバーする「組織化された取引施設(Organised Trading Facility=OTF)」と呼ばれるカテゴリーが新たに設けられ、これまで規制の枠外にあったプラットフォーム上での取引が幅広く規制対象となる。

一方、ヘッジファンドなどが1千分の1秒単位で自動発注を繰り返すHFTは、常に大量の注文を出すため市場の厚みが増す一方、相場を乱高下させるリスクを伴う。こうした技術革新に伴う市場の価格変動リスクを抑制するため、MiFID IIでは新たに「アルゴリズム取引」と呼ばれるカテゴリーを設けてHFTを含む自動取引を規制する。

さらに投機筋による食料などの価格つり上げを防ぐため、コモディティ市場でトレーダーが一定の時間内に持てるポジション(建玉)に上限が設けられる。ただし、天然ガスと電力は規制対象から除外され、原油と石炭についても新ルール導入から3年半の移行期間が設けられる。