欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/9/14

EU情報

北欧2社がデンマーク携帯事業の統合計画を撤回、欧州委と承認条件で合意できず

この記事の要約

ノルウェーの通信大手テレノールとスウェーデンの同業テリアソネラは11日、デンマークの携帯電話サービス事業を統合する計画を撤回すると発表した。競争上の理由から欧州委員会が難色を示しており、最終的に承認の条件を満たすことは困 […]

ノルウェーの通信大手テレノールとスウェーデンの同業テリアソネラは11日、デンマークの携帯電話サービス事業を統合する計画を撤回すると発表した。競争上の理由から欧州委員会が難色を示しており、最終的に承認の条件を満たすことは困難と判断した。欧州通信市場ではこのところ業界再編の動きが活発化していたが、今回、欧州委が厳しい姿勢を打ち出したことで、市場では香港のハチソン・ワンポアが英国とイタリアで計画している買収や事業統合の行方に関心が集まっている。

テレノールとテリアソネラは昨年12月、デンマーク事業を統合して折半出資の合弁会社を設立すると発表した。デンマークの携帯電話市場で2位と3位のシェアを持つ両社の統合が実現すれば、新会社は加入者数、売上高ともにTDCを抜き、最大手に浮上するはずだった。

欧州委は合弁計画を認めた場合、デンマークで携帯電話サービスを提供する事業者が4社から3社に減ることになり、公正な競争が阻害される可能性があるとして、4月に本格調査を開始した。実質的に上位2社による複占が形成されることで、価格の上昇やサービスの質の低下を引き起こす恐れがあるほか、他社のネットワークを利用して自社ブランドのサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)にとっては選択肢が狭められ、価格交渉で不利な立場に置かれることになると指摘。計画を承認するための条件として、新たに市場参入する「第4の事業者」の設立を求めていた。

テレノールとテリアソネラはこれまで2度にわたって改善策を提示し、最終的に両社が保有するインフラ設備の約40%を新規参入する事業者に移管する計画を打ち出した。しかし、欧州委を納得させることはできず、これ以上の譲歩は企業価値を損なうことになると判断した。テレノールのモルテン・ジョンセン上級副社長は計画の撤回について、「事業統合の承認を得るための条件で欧州委と合意することができなかった。両社の利益のため、断固とした行動をとるべきだと考えた」と述べている。

今回の動きを受け、市場ではハチソンの事業再編計画を欧州委が阻止する可能性を指摘する声が出ている。同社は今年3月、スペインのテレフォニカから英携帯電話子会社O2を102億5,000万ポンドで買収すると発表。8月には露携帯電話大手ビンペルコムとイタリアでの携帯事業を統合する計画を打ち出した。

シティグループのアナリスト、サイモン・ウィードン氏は、市場再編を後押ししてきたアルムニア前欧州委員の後任として競争政策を統括するベスタエアー委員にとって、北欧2社の事業統合計画はいわば「テストケース」だったと指摘。「ハチソンは英国での買収を成功に導くため準備を進めてきたと思うが、欧州委はデンマークの案件で非常に厳しいスタンスをとった」と述べ、O2の買収が承認される確率は50%との見方を示した。一方、通信業界の幹部らは、デンマークと英国では携帯電話市場の規模や事業者の数が異なるため、O2の買収によって著しく競争が制限される可能性は低く、計画は承認されるとの見通しを示している。