欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/9/14

EU情報

EU・米、個人情報保護に関する包括協定に仮調印

この記事の要約

欧州委員会と米政府は8日、刑事司法協力における個人情報の取り扱いに関するEU・米間の包括協定(Umbrella Agreement)に仮調印した。テロや犯罪行為の防止・捜査・訴追を目的とした当局による個人情報の移転・共有 […]

欧州委員会と米政府は8日、刑事司法協力における個人情報の取り扱いに関するEU・米間の包括協定(Umbrella Agreement)に仮調印した。テロや犯罪行為の防止・捜査・訴追を目的とした当局による個人情報の移転・共有に際し、高度な保護レベルを確保するための措置を定めたもので、データの使用目的や個人に対する権利保障などを規定している。協定の発効に向けた今後の手続きとして、EU側では欧州議会の承認を得て閣僚理事会の採択が必要。一方、米側では法的救済法(Judicial Redress Bill:EU市民がプライバシー侵害を受けた場合、米国の裁判所に法的救済を求める権利を認める法律)の成立が正式調印の条件となる。

EUは米国が2001年の同時多発テロを受けて策定した「テロ資金追跡プログラム(TFTP)」に基づき、金融取引データや航空機の旅客情報(PNR)の提供に関する協定を結んでいる。しかし、欧州議会はEU市民の個人情報が域外で使用されることに強い懸念を表明し、EUから米国に提供する個人情報の取り扱いに関する基本原則を定めた枠組み協定の締結を要求。これを受け、加盟国から交渉権限を付与された欧州委が2011年3月から米政府と交渉を続けていた。

協定書によると、テロを含む犯罪行為の防止・捜査・訴追を目的とした刑事・司法協力の枠組みにおいてのみ、双方の当局間で個人情報の共有が認められる。提供された個人情報を第3国または国際機関に転送する際は、あらかじめ情報提供国の承認を得なければならない。

一方、すべての個人は自分に関する情報へのアクセスが保障され、不正確な情報があれば修正を求めることができる。さらに、国籍や居住地に関係なく、個人が相手国に法的救済を求める権利が保障される。このため、米当局によって自分に関する情報へのアクセスや修正要求が拒否されたり、個人情報が不当に公表されるなどしてプライバシーが侵害された場合、EU市民は米国の裁判所に法的救済を求めることが可能になる。