2010/2/15

総合 –EUウオッチャー

銀行取引データ提供めぐる米との協定、欧州議会が暫定合意破棄を決議

この記事の要約

欧州議会は11日の本会議で、金融取引情報の提供に関するEUと米国の暫定合意を破棄する決議案を賛成多数で可決した。EU加盟国は米国が進めるテロ対策を支援するため、国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じた送金データの提供を認 […]

欧州議会は11日の本会議で、金融取引情報の提供に関するEUと米国の暫定合意を破棄する決議案を賛成多数で可決した。EU加盟国は米国が進めるテロ対策を支援するため、国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じた送金データの提供を認めることで合意していたが、欧州議会は個人情報の保護が脅かされると主張し、暫定合意の承認を拒否した。米側はテロ対策に深刻な影響が出るとしてEUの対応を非難しており、欧米関係の新たな火種となる可能性が出てきた。

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米国は2001年の同時多発テロを機にテロ資金根絶に向けた取り組みを強化しており、ベルギーに本部を置くSWIFTは米財務省の求めに応じて顧客の氏名、口座番号、受取人の氏名、送金の額や目的といった情報を提供してきた。これに対し、EU内ではSWIFTからの情報提供が明るみに出た06年以来、加盟国の同意を得ずにEUと比べてデータ保護対策が甘いとされる米国に個人情報が移転されることへの反発が強まった。

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こうした中で加盟国は昨年11月、◇SWIFTが米側に提供するデータはテロ活動への関与が疑われる人物に関する情報に限定する◇EU内での送金に関する情報を対象から除外する◇財務省から捜査当局や他の政府機関にデータを転送する際の手続きを厳格化する――などの条件をつけたうえで、有効期限を9カ月とする暫定的な協定の内容で合意。欧州議会の承認を経て今月中に協定を発効させ、改めて米側と新協定の締結に向けた交渉に入る計画だった。しかし、欧州議会の専門委員会は今月4日、協定案の内容は「個人情報保護の原則に反する」として暫定合意の破棄を求める反対決議を採択。11日の本会議では376対196(棄権31)で同決議が可決された。

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欧州議会のブゼック議長は「議員の過半数がセキュリティの強化とEU市民の自由および基本的人権保護のバランスが取れていないと判断した」と説明。また、反対決議をまとめたオランダ選出のHennis-Plasschaert議員は「米政府が議会に外国当局への金融取引情報の提供を許可する法案を提出したケースを想像すれば、議会がどのような結論を出すかは明白だ」と付け加えた。

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米政府はクリントン国務長官やガイトナー財務長官がブゼック議長に直接働きかけを行うなどEUへの圧力を強めていたが、欧州議会の決定により、当面はSWIFTのデータにアクセスすることができなくなる。ブリュッセルの米政府代表部は欧州議会の決議に「失望した」との声明を発表。「テロ対策における欧米間の協力体制は後退することになる」と警告した。

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一方、欧州委員会のマルムストロム委員(内政担当)は「セキュリティの強化と高い水準の個人情報保護を両立させる方法があると考えている」と強調。事態の打開に向けて近く米財務省と協議する意向を示した。

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