2011/4/18

環境・通信・その他

欧州委が13年からの炭素税導入を提案、エネルギー税との二本立て課税

この記事の要約

欧州委員会は13日、現行の「エネルギー税指令」を改正し、新たにEUレベルで炭素税を導入する構想を発表した。ガソリンなどの化石燃料に対する税金を二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する炭素税と、熱量に基づくエネルギー税の […]

欧州委員会は13日、現行の「エネルギー税指令」を改正し、新たにEUレベルで炭素税を導入する構想を発表した。ガソリンなどの化石燃料に対する税金を二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する炭素税と、熱量に基づくエネルギー税の二本立てとし、それぞれEU共通の最低税率を設定する。欧州委は閣僚理事会と欧州議会の承認を経て、2013年の実施を目指す方針だが、炭素税の導入には化石燃料への依存度が高い中東欧諸国が反対する公算が大きく、調整は難航が予想される。

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炭素税は炭素の含有量に応じて石炭・石油・天然ガスなどに課税するシステムで、化石燃料や化石燃料を利用した製品の価格を引き上げて需要を抑制し、CO2排出削減を目指す政策手段。EU加盟国では1990年代からスウェーデン、デンマーク、フィンランドで炭素税が導入されている。

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EUは20年までに温室効果ガスを1990年比で20%削減する目標を掲げ、米国や中国など主要排出国の取り組みに応じて目標を30%まで引き上げる方針を打ち出している。欧州委は目標の達成に向け、CO2排出量取引制度と並ぶ温暖化対策の柱として炭素税を導入する必要があると判断した。同委のシェメタ委員(税制担当)は「エネルギー効率とCO2削減の数値目標を達成するため、公正で透明な課税システムを整備する必要がある」と強調している。

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欧州委の提案によると、炭素税はガソリン、軽油、天然ガスなどを対象に、13年からCO2排出量1トンにつき最低20ユーロを課税する。一方、エネルギー税は輸送燃料と暖房用燃料に分けて最低基準を設定し、輸送燃料は18年までに熱量1ギガジュール当たり9.6ユーロ、暖房用は同0.15ユーロを課税する。主に運輸、建設、農業などの分野が課税対象となる見通しで、排出量取引制度に参加している製造業、電力会社、航空会社などは対象から除外される。

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なお、加盟国は独自の判断でいずれも最低基準より高い税率を設定することが可能で、家庭で使用される暖房用燃料については社会的影響を考慮して非課税とすることもできる。

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欧州委の構想が実現した場合、軽油にかかる税金は現在の1,000リットル当たり最低330ユーロから18年には412ユーロに引き上げられる一方、ガソリンは359ユーロで変動しない見通し。欧州委によると、すでに大半の加盟国は化石燃料に18年時点の最低基準を上回る税金を課しており、消費者への影響は限定的とみられる。また、23 年までを移行期間とすることで、産業界は新たな税制に対応するための時間的猶予を与えられる。ただ、化石燃料への依存度が高いポーランドなどに加え、ドイツも自国の自動車メーカーがディーゼルエンジンの開発に巨費を投じてきた経緯から、炭素税の導入に難色を示している。

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