2011/7/25

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏がギリシャ第2次支援で合意、民間負担含め1590億ユーロ

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は21日にブリュッセルで開いた臨時首脳会議で、深刻な財政危機に陥っているギリシャへの第2次支援で合意した。EUと国際通貨基金(IMF)が1,090億ユーロを追加融資するほか、ギリシャ国債を保有する民間金融 […]

ユーロ圏17カ国は21日にブリュッセルで開いた臨時首脳会議で、深刻な財政危機に陥っているギリシャへの第2次支援で合意した。EUと国際通貨基金(IMF)が1,090億ユーロを追加融資するほか、ギリシャ国債を保有する民間金融機関に自主的に500億ユーロを負担させるという内容。支援総額は1,590億ユーロに上る。

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民間による負担のうち126億ユーロは、金融機関などが持つ国債をギリシャ政府が割引価格で買い取る形で実現することが決まっている。残る部分の詳細は未定で、9月に正式決定する方針だ。首脳会議では、民間銀行が保有するギリシャ国債の長期のものへの買い換え、交換や、償還後の買い戻しなど4つの案が提示された。

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EUによると、一連の追加支援により国内総生産(GDP)比160%に膨れ上がっているギリシャの債務は2014年末までに12%縮小する見通し。パパンドレウ首相は、2020年までの資金需要が満たされ、財政再建が軌道に乗るとして歓迎の意を表した。

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ただ、格付け機関は民間の負担分がギリシャ国債残高の21%に上ることから、民間に負担を強いる手法を事実上のデフォルト(債務不履行)とみなすと警告しており、フィッチ・レーティングスは22日、ギリシャの格付けを「制限的デフォルト(債務不履行)」とする意向を表明した。正式にデフォルトと認定されれば、ユーロ圏では初めてとなる。

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ユーロ圏17カ国は、格付け会社がデフォルトを宣言し、ギリシャがさらに格下げされて国債発行による資金調達が不可能となる場合は、他のユーロ圏諸国が保証を供与して欧州中央銀行(ECB)から資金を調達できるようにするといった対策を準備する。

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ギリシャは昨年5月にEUとIMFから総額1,100億ユーロの金融支援を取り付けた。しかし、信用不安が収まらず、国債償還の資金を国債の新規発行で調達できない状況にあることから、第2次支援の実施を要請していた。

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今回の首脳会議ではギリシャ支援策として、融資の返済期限を現在の7年半から15~30年に延長し、金利も4.5~5.8%から3.5%に引き下げ、負担を軽減することでも合意した。

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さらに首脳会議では、ギリシャを震源地とした信用不安が他のユーロ圏諸国にも及んでいることへの対策として、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の機能を強化し、対象国が危機的状況に陥る前に緊急融資を行えるようにすることで合意。危機に陥った国の国債を流通市場で買い取ることができるようにすることも決めた。ギリシャ危機の余波で国債利回りが急上昇しているイタリア、スペインが、深刻な危機に陥るのを防ぐ狙いがある。

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このほか信用不安対策として、すでにEUとIMFの支援対象となっているアイルランド、ポルトガルについても、ギリシャと同様の返済条件緩和を適用することを決めた。

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ギリシャ支援への民間関与をめぐっては、ECBのトリシェ総裁がデフォルト認定を懸念して反対していたが、同様の手法による支援をギリシャに限定するという約束をユーロ圏首脳から取り付け、容認に転じた。

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また、仏サルコジ大統領がEU内の金融機関を対象に「銀行税」を課し、ギリシャ支援の財源とするという案を提唱していたが、首脳会談で取り下げた。

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ギリシャに端を発した信用不安で、ユーロ圏が緊急融資にとどまらない包括的な対応を打ち出したのは初めて。EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)は「通貨同盟とユーロの防衛に向けて我々がぶれていないことが示された」と意義を強調した。市場も今回の決定を歓迎し、ユーロは同日、対ドルで急上昇。ギリシャ国債の利回りも大幅に下がった。

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