2011/10/10

産業・貿易

店頭デリバティブの新規制で合意、CCPを通じた清算義務化など柱

この記事の要約

EU加盟国は4日開いた財務相会合で、店頭市場で取引される金融派生商品(デリバティブ)に対する監視強化を目的とした規則案の内容で合意した。当局が定める商品の店頭取引に際し、中央清算機関(CCP)を通じた清算を義務づけること […]

EU加盟国は4日開いた財務相会合で、店頭市場で取引される金融派生商品(デリバティブ)に対する監視強化を目的とした規則案の内容で合意した。当局が定める商品の店頭取引に際し、中央清算機関(CCP)を通じた清算を義務づけることなどを柱とする内容。店頭市場の透明性を高めて信用リスクを低減し、監督機関が取引の全容を把握できるようにするのが狙いだ。欧州議会の承認を経て2012年末の新ルール導入が見込まれる。

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デリバティブ取引では店頭取引が全体の8割以上を占めるが、取引所取引と比べて取引に関する情報の入手が困難で、取引量の増大と共に取引が複雑化して信用リスクが高まる傾向にある。金融危機の教訓から各国政府は店頭デリバティブ市場の透明性を高める必要があるとの認識で一致し、2009年9月のG20ピッツバーグ・サミットでは12年末までに店頭デリバティブ取引に関する新たな規制を導入することで合意が成立。欧州委員会はこれを受けて昨年9月に店頭デリバティブ規制に関する規則案をまとめ、閣僚理事会と欧州議会で検討を重ねてきた。

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財務相理で合意された規則案によると、銀行をはじめとする金融機関や一定のポジション(持ち高)を保有する事業会社などは、欧州証券監督機構(ESMA)が定める商品の店頭取引を行う際、すべてCCPでの清算が義務づけられる。一方、CCPでの清算を義務づけられない商品の店頭取引に関しては、適切な担保の確保や追加的な資本の保有など、信用リスクを低減させるための措置を講じることが求められる。CCPの認可および監督はEU各国の金融当局が行うが、EU域外に設置されたCCPが域内で清算サービスを提供する場合はESMAの認可を取得しなければならない。

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また、金融機関や一定のポジションを保有する事業会社などはすべての店頭デリバティブ取引について、レポジトリ(取引情報集積機関)に取引に関する情報を報告することが義務づけられる。報告内容には契約の当事者、受益者、契約の種類・原資産・満期などが含まれる。レポジトリは報告された情報を基に、商品ごとにポジションの合計を公表することが義務づけられる。レポジトリの登録と監督はESMAが行い、EU域外に設置されたレポジトリが域内でサービスを提供する場合はESMAの認可を取得する必要がある。

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店頭デリバティブ規制に関する議論では、英国が取引所取引についてもCCP を通じた清算を義務化するなど、店頭取引と同様の規制を導入すべきだと主張し、欧州委の規則案に反対の立場をとっていた。欧州における店頭デリバティブ取引の大部分が英国で行われているため、店頭取引に対してのみ規制が強化された場合、自国の金融センターが不利な立場に置かれるというのが英国の主張だ。財務相理でも議論は平行線をたどったが、最終的に欧州委が取引所取引についても早急に新たな規制策をまとめる方針を打ち出し、ようやく合意に至った。

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