2012/10/8

産業・貿易

「バーゼル3」実施状況の評価報告、EU規制案は2項目で「不適合」

この記事の要約

バーゼル銀行監督委員会は1日、来年から段階的に導入される国際的な銀行資本規制「バーゼル3」の実施状況に関する評価報告書を公表した。EU、日本、米国の規制がバーゼル3に適合しているかどうかを検証したもので、EUについては1 […]

バーゼル銀行監督委員会は1日、来年から段階的に導入される国際的な銀行資本規制「バーゼル3」の実施状況に関する評価報告書を公表した。EU、日本、米国の規制がバーゼル3に適合しているかどうかを検証したもので、EUについては14の審査項目のうち2項目で「著しく不適合」と厳しい評価を下した。

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バーゼル3は国際的に業務展開する銀行に対し、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(Tier1)比率を2019年までに7%まで引き上げることを求めている。EU加盟国は5月の財務相理事会で◇域内の全銀行を対象に、Tier1比率を現在の2%から15年までに4.5%に引き上げ、19年には7%の達成を義務づける◇各国当局がそれぞれの権限で、自国の銀行に対して最大3%の資本バッファー(上積み)を課すことができる仕組みを導入する ――などで合意。来年1月の新ルール導入に向け、欧州議会との間で協議が続いている。

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バーゼル委の審査では、14項目のうち7項目が「適合」、5項目は「概ね適合」、2項目が「不適合」とされた。不適合となったのはTier1の定義とリスク資産の算定方法。自己資本の定義に関しては、ドイツなどの強い主張で、普通株以外の証券も一定の条件を満たしたものについてはTier1とみなす方向で調整が進められている。一方、バーゼル委はリスク資産について、EUの規制はソブリン債リスクを考慮しておらず、リスクの高い国債へのエクスポージャーに備えた資本バッファーを求めていないと指摘。他の国・地域に比べて「抜け道の多い緩やかな規制」のため、EU内の銀行は容易に自己資本比率を引き上げることが可能になり、結果的に「金融市場の安定と国際競争力に深刻な影響が及ぶ可能性がある」と警告している。

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これに対し、欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は声明で、「EUは国際的に合意されたバーゼル3に基づく規制の実施を目指している」と強調し、バーゼル委の評価は「確固たる証拠と明確な手法に裏付けされたものとは考えにくい」と反論。EUとして同委の見解は受け入れられないとの立場を表明した。

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