2012/10/8

総合 –EUウオッチャー

欧州委が「単一市場議定書II」発表

この記事の要約

欧州委員会は3日、欧州単一市場を深化させて経済成長を促すための12の優先行動を盛り込んだ「単一市場議定書Ⅱ(Single Market ActⅡ)」を発表した。単一欧州議定書(Single European Act)に基 […]

欧州委員会は3日、欧州単一市場を深化させて経済成長を促すための12の優先行動を盛り込んだ「単一市場議定書Ⅱ(Single Market ActⅡ)」を発表した。単一欧州議定書(Single European Act)に基づいて人、モノ、資本、サービスの自由移動を中心とする単一市場が形成されて20年が経過し、域内で活動する企業は、5億人に上る消費者へのアクセスが可能になり、消費者にとってはさまざまな領域で選択肢が拡大した。しかし、欧州債務危機に伴う景気低迷や失業率の上昇などを背景に、一段の市場統合を進めて単一市場のメリットを最大化するための追加的措置が必要と判断した。

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欧州委は昨年4月、法整備の遅れや行政上の煩雑な手続きなどがいくつかの分野で単一市場の達成を阻んでいるとして、こうした障害を取り除くための「単一市場議定書Ⅰ」を打ち出し、現在、欧州議会とEU閣僚理事会で審議が行われている。今回の提案はこれを補完するもので◇統合された域内ネットワーク◇人とビジネスの国境を超えた移動◇デジタル経済◇結束と社会的起業精神――の4分野に重点を置いた内容になっている。

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域内ネットワークに関しては、輸送・エネルギー・通信網の完全な統合を目指し、国内鉄道旅客輸送の市場開放を進めることや、「単一欧州空域」構想を推進することなどを提案している。人とのビジネスの移動に関しては、破産手続きを簡素化して起業家や中小企業が国境を越えて活動しやすい環境を整備することや、域内の他の国での求人や就職・転職活動を支援するためのEU共通のポータルサイトの開設などが盛り込まれている。一方、欧州委は2015年までにデジタル単一市場を実現する目標を掲げ、高速ブロードバンド網への投資促進や、電子商取引の普及拡大に向けた電子決済システムの開発推進などを重要課題に挙げている。さらに、すべてのEU市民が単一市場のメリットを利用して経済的・社会的な活動に参加できるようにするため、銀行口座の開設や変更を容易にしたり、手数料に透明性を持たせることなどを提案している。

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欧州委は13年春までに単一市場議定書Ⅱに盛り込んだ優先行動を実施するための法案をまとめる方針。バルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「単一市場はEU市民と企業により多くの恩恵をもたらすことができる。単一市場という貴重な資産を最大限に活用してEU経済の競争力を強化し、力強い成長を実現するため、あらゆる政策を動員する必要がある」と強調した。

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