2012/10/8

環境・通信・その他

遺伝資源合法的利用の規則案発表、「名古屋議定書」に対応

この記事の要約

欧州委員会は4日、新薬開発などの目的で地域固有の遺伝資源(生物資源)を原産国から無許可で持ち出し、利益を独占する「バイオ・パイラシー」を防止するための規則案を発表した。国連の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10) […]

欧州委員会は4日、新薬開発などの目的で地域固有の遺伝資源(生物資源)を原産国から無許可で持ち出し、利益を独占する「バイオ・パイラシー」を防止するための規則案を発表した。国連の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で合意された、遺伝資源を利用する際のアクセスや利益配分に関する国際ルールを定めた「名古屋議定書」を実施するための具体策をまとめたもので、利用者に対し、遺伝資源が合法的に採取され、供給国との間で公正に利益配分されていることの証明を義務づける内容。欧州議会とEU閣僚理事会で規則案について検討する。

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遺伝資源には先住民の間で伝統的に伝えられてきた生物を利用するための知識なども含まれる。途上国の間では、自国で発見された生物資源を先進国とその企業が搾取しているといった不満が根強く、途上国と先進国の間で遺伝資源の利用のあり方をめぐる対立が深まっていた。こうしたなか、国連が定めた「国際生物多様性年」の2010年10月に名古屋でCOP10が開催され、生物多様性を保全するための「愛知目標」と並んで、遺伝資源への合法的なアクセスと事前合意に基づく「公正かつ公平」な利益配分などを定めた名古屋議定書が採択され、締約国は議定書に沿って国内法を整備することが義務づけられた。

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規則案によると、遺伝資源の利用者は供給国のルールに従って合法的に遺伝資源と関連する伝統的知識にアクセスしたことや、遺伝資源から得た利益が供給国との間で公正に分配されていることを証明しなければならず、ルールに違反した場合は制裁が科される。また、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関するベストプラクティスを分野ごとに確立し、研究機関や企業が情報を共有しながら合法的に遺伝資源を利用できる体制を整える。さらに貴重な植物の種子を保管して多様性を保全するため、「種子バンク」や植物園のデータベースを構築することも規則案に盛り込まれている。

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