2013/1/7

環境・通信・その他

欧州委が回線使用料の域内統一を検討、ブロードバンド普及促進策で

この記事の要約

欧州委員会はEUレベルで高速ブロードバンド通信の普及拡大を図るための新たな規制の一環として、中小の事業者が大手通信会社に支払う回線使用料を域内で統一する方向で検討を進めているもようだ。\ 欧州委は当初、大手通信会社が回線 […]

欧州委員会はEUレベルで高速ブロードバンド通信の普及拡大を図るための新たな規制の一環として、中小の事業者が大手通信会社に支払う回線使用料を域内で統一する方向で検討を進めているもようだ。

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欧州委は当初、大手通信会社が回線事業から得る利益を圧迫することでビジネスモデルの転換を促し、光ファイバー網への投資を加速させる構想だったが、自国で電話回線をほぼ独占的に保有するテレコムイタリア、テレフォニカ、フランステレコムなどの強い反対で方針転換した経緯がある。ロイター通信が入手した欧州委の内部資料によると、一律の料金規制が導入された場合、EU加盟国のうち10カ国では現在より回線使用料が引き上げられることになるという。

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EUは2020年までに取り組むべき情報通信技術(ICT)分野の優先課題をまとめた「デジタルアジェンダ」で、高速インターネットの普及促進を最も重要な政策の1つと位置付け、同年までにすべてのEU市民が通信速度30メガビット/秒(Mbps)以上のブロードバンド接続サービスを利用できるようにすることなどを目標に掲げている。しかし、これまでのところ米国、日本、韓国などに比べて高速ブロードバンドの普及が大幅に遅れているのが実情。域内全域に光ファイバー網を構築するには総額2,700億ユーロの資金が必要とされるが、欧州委は規制上の不確定要素を取り除いて大手通信会社に安定的に収益を確保させることが、結果的にインフラ構築への投資促進につながるとの判断に基づき、規制を含めた具体策を検討している。

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ロイターによると、欧州委は大手通信会社が電話回線を貸与する際の回線使用料を2016年末までにユーザー1人当たり月8~10ユーロとする規制案をまとめたもよう。計画が実現した場合、オランダ、オーストリア、ポーランド、ハンガリーなど10カ国では現在より回線使用料が引き上げられ、特にスロバキアでは現在の4.2ユーロに比べて2倍に跳ね上がる計算になる。一方、現在は域内で最も高い12.41ユーロに設定されているアイルランドのほか、英国、フィンランド、ルクセンブルクでは逆に回線料金が引き下げられることになる。

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欧州委が今年7月にまとめた政策文書には◇大手通信会社は「非差別的条件」で電話回線を第3者に提供しなければならないが、回線使用料を引き下げる必要はない◇光ファイバー網の提供に際し、少なくとも20年まではネットワークを保有する大手通信会社が自由に回線使用料を設定することができる――などが盛り込まれている。今回の内部資料でも、厳格な規制で大手通信会社の収益を圧迫することは投資を促すうえでマイナスになるとの認識を示し、光ファイバー網について「各国当局は強制的な料金規制を維持または導入すべきではない」と明記している。

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