2013/4/29

総合 –EUウオッチャー

スイスがEUからの移民制限強化、西欧諸国にもセーフガード適用

この記事の要約

スイス政府は24日、EUの西欧諸国からの労働者流入を規制すると発表した。EU諸国からの移民が急増していることを受けたもので、中東欧8カ国を対象に導入している労働許可証発給の数量を制限する措置を6月から他の加盟国にも適用す […]

スイス政府は24日、EUの西欧諸国からの労働者流入を規制すると発表した。EU諸国からの移民が急増していることを受けたもので、中東欧8カ国を対象に導入している労働許可証発給の数量を制限する措置を6月から他の加盟国にも適用する。

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スイスはEU と労働市場開放協定を1999年に締結。これによってEU域内の労働者は原則的にスイスで自由に就労できるようになった。ただし、スイスは移民流入が一定限度を超えた場合、労働許可証の年間発給数を制限する「セーフガード」措置の発動が認められている。これに基づき、同国は昨年5月、ポーランドなど中東欧8カ国の労働者への許可証発給を年間2,180人に制限する措置を発動済み。6月1日からは同措置を西欧のEU諸国にも適用し、許可証発給は年5万3,700人を上限とする。

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スイス政府によると、EUからの移民は欧州債務危機を機に急増しており、新たに流入する労働者から母国に帰る人の数を差し引いた純増ベースで、ここ数年は約8万人の増加となっている。とくにスペイン、ポルトガルなど南欧からの流入が多い。これを受けて国内では、極右政党の国民党を中心に、移民制限導入を求める圧力が強まっていた。

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セーフガード発動は、直近年の移民が過去3年間の平均を少なくとも10%上回る場合に認められる。スイスは5月末に同要件が満たされることから、西欧諸国への適用を決めた。

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スイス政府は同規制の導入について、移民急増がスイス人の雇用に悪影響を及ぼしているほか、住宅価格の高騰も招いていることから、やむを得ない措置と説明しているが、EUのアシュトン外交安全保障上級代表は24日発表の声明で「人の自由な移動が双方にもたらす利益を軽視している」として、遺憾の意を表明した。

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