2013/7/15

総合 –EUウオッチャー

司法・内務分野の共通政策、英が一部政策のオプトイン表明

この記事の要約

英政府は9日、2009年12月に発効したEUの基本条約「リスボン条約」で英国に認められた司法・内務分野の共通政策に関する例外規定について、133の政策を一括して適用除外(オプトアウト)したうえで、35の政策についてEU共 […]

英政府は9日、2009年12月に発効したEUの基本条約「リスボン条約」で英国に認められた司法・内務分野の共通政策に関する例外規定について、133の政策を一括して適用除外(オプトアウト)したうえで、35の政策についてEU共通の枠組みに改めて参加する(オプトイン)方針を表明した。オプトインする政策にはEU共通逮捕状や欧州刑事警察機構(ユーロポール)への参加などが含まれている。月内にも議会で審議が始まる見通しだが、与党・保守党の反EU派議員らは重要政策におけるEUへの権限委譲に強く反発しており、調整は難航が予想される。

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EUの東方拡大に伴う組織的犯罪の横行や国際テロの脅威などを背景に、リスボン条約では加盟国による司法・警察協力の枠組みが強化され、国境を越えた重大犯罪について、欧州議会と閣僚理事会の共同決定手続きを経て指令や共通の罰則規定を設けることが可能になった。しかし、英国は税制、社会保障、外交、雇用と同様、司法・犯罪分野についても独自に政策を決定する権限の維持を主張。交渉の末、司法・犯罪政策に関してはリスボン条約以前に合意した共通政策の中から英国が自国の実情に合わせて選択できる権利が認められ、14年5月までにオプトインする政策を決定することが義務づけられた。

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英国では伝統的にEU懐疑論が根強く、保守層を中心にEUからの大幅な権限奪還を求める声が高まっている。こうしたなかでメイ内務相は昨年10月、司法・犯罪分野の共通政策をすべてオプトアウトする方向で検討を進めていることを明らかにした。これに対し、保守党と連立を組む自由民主党は親EUの立場から一括適用除外に反対を表明し、政権内で意見調整が進められていた。

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メイ内務相は9日の議会演説で、「政策、原理原則、現実主義の観点から」133の共通政策をすべて適用除外したうえで、英国の利益に適った35の政策をオプトインする方針を打ち出した。保守党の反EU派議員から「恥を知れ」などの罵声が飛ぶなか、同相はEU共通逮捕状のスキームについて「犯罪人の身柄引き渡しを要求する際の重要な手段になる」と説明。さらに国際テロや国境を越えた組織犯罪に対抗するには加盟国間の緊密な連携が欠かせないとして、自国の安全保障政策と衝突しないよう一定のルール改正を行ったうえで、ユーロポールに参加すべきだとの考えを示した。

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欧州委員会は一部政策のオプトインを表明したキャメロン政権の決断を歓迎している。マルムストロム委員(内務担当)は「いくつかの政策について英国がEU共通の枠組みに再び参加する意思を表明したことは喜ばしい。犯罪やテロ対策で英国が引き続き貢献してくれることを期待する」とコメント。また、同委員の報道官も共通政策の一括適用除外は「織り込み済み」としたうえで、「英国は現実的な方法で必要な政策を選択しようとしているようだ」と語った。

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