2014/1/27

環境・通信・その他

30年までに温室効果ガス40%削減、欧州委が新たな中期目標を提案

この記事の要約

欧州委員会は22日、2030年に向けた気候変動・エネルギー政策の枠組みをまとめ、同年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減するなどの目標を打ち出した。EUは20年を達成期限とする温室効果ガス削減目標を掲げてい […]

欧州委員会は22日、2030年に向けた気候変動・エネルギー政策の枠組みをまとめ、同年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減するなどの目標を打ち出した。EUは20年を達成期限とする温室効果ガス削減目標を掲げているほか、50年に向けた長期目標も示しているが、早期に法的拘束力のある中期目標を設定することで、地球温暖化対策をめぐる国際間の協議で主導権を握りたい考え。3月のEU首脳会議で欧州委の提案について話し合う。

EUは20年までの目標として◇温室効果ガスを90年比で20%削減する◇再生可能エネルギーの利用比率を20%に拡大する◇エネルギー効率を20%削減する――を掲げている。欧州委によると、温室効果ガスについては12年末に90年比で18%の削減を達成しており、20年の20%削減はほぼ確実とみられている。国際社会はすべての国が参加する20年以降の温暖化対策の新たな枠組みについて、15年12月にパリで開催される国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での最終合意を目指している。欧州委はパリ会議に向けた議論でEUが主導権を握るため、加盟国と欧州議会の承認を経て15年初めに新たな削減目標を国連に提出したい考えを示している。

一方、欧州委は30年までに再生可能エネルギーの利用比率を全体の「少なくとも27%」に拡大する目標も打ち出した。20年までの目標では各国に個別の数値目標を割り当てて達成を義務づけているが、今回はEU全体の目標のみで国別の目標は設定せず、各国のエネルギー政策に委ねる。再生可能エネルギーの利用比率に関する目標の達成度は国によってばらつきが大きく、脱原発に舵を切ったドイツがより厳しい目標の設定を主張する一方、原発を主体に温室効果ガス削減を進める英仏が個別目標の設定に強く反対したとされる。

エネルギー効率に関しては、欧州委が現行の「再生可能エネルギー利用促進指令」の見直しを進めており、年内に新たな数値目標が提示される可能性がある。

さらにEUが温暖化対策の柱と位置付ける排出量取引制度に関して、欧州委はユーロ危機に伴う景気低迷で生じた余剰排出枠に対処して排出権価格を下支えするため、21年から「準備制度」を導入して排出枠の需給調整を図ることを提案している。

このほか欧州委は目標の達成状況を客観的に評価するため、米国をはじめとする域外主要国とのエネルギー価格の比較、エネルギー源の多様化、加盟国間でエネルギーを融通し合うための電力・ガス網の相互接続などに関する指標を導入することも提案に盛り込んだ。

欧州委のバローゾ委員長は声明で「気候変動対策は地球規模で取り組むべき課題であり、EUにとってエネルギー政策は国際競争力を高めるためのカギを握る。さまざまな研究やデータ分析から、30年までに温室効果ガスを40%削減するという野心的な目標を設定することが、低炭素経済への転換を図る上で最もコスト効率の高い方法だとの結論に至った。また、再生可能エネルギーの利用比率を少なくとも27%に高めるとの目標は、エネルギーの安定供給を確保しながら環境技術への投資を促すうえで重要なサインになる」と説明している。

一方、環境団体やシンクタンクなどからは、新たな目標は産業界の意向に沿ったもので不十分との声が上がっている。ワシントンに本部を置く世界資源研究所のジェニファー・モーガン氏は「EUの公約が他の国にとって基準となる。最初に具体的な目標を打ち出したことは評価できるが、40%の削減は科学者が勧告している数値目標の下限でしかない」とコメント。またグリーンピースの幹部は、EUには30年までにエネルギー需要の約半分を再生可能エネルギーで賄う潜在能力があると指摘し、27%の目標設定に「失望した」と述べている。