欧州委員会は20日、EU域内の空港と航空会社に対する国家補助の適用条件を定めた新たな指針を発表した。航空部門の経営環境が大きく変化するなか、各国政府や地方自治体が補助金を交付できる条件を明確にすることで、EU市民の利便性向上を実現しながら単一市場における公正な競争を確保するのが狙い。EU官報への掲載を経て3月から新ルールが導入される見通しだ。
欧州委は現在、航空自由化に伴う航空会社の再編支援を目的とする補助金の交付基準を定めた 1994年の指針と、地方空港に拠点を置く航空会社に対する国家補助の適用条件を定めた2005年の指針に基づいて、各国政府や地方自治体による公的支援の妥当性を評価している。しかし、地域活性化などの名目で過去10年ほどの間に相次いで地方都市に空港が開設され、さほど需要のない地域に複数の空港ができて共倒れの危機に直面する一方、ハブ空港ではますます混雑が悪化するといった悪循環が生じている。また、格安航空会社が空港使用料の減額をはじめとする優遇措置を利用して急速にシェアを拡大する一方で、大手航空会社の間では合併などの再編プロセスがほぼ完了し、業界の勢力図が大きく変化している。欧州委はこうしたビジネス環境の変化を踏まえ、およそ3年前から航空部門に対する国家補助ルー ルの見直しを進めていた。
新たな指針によると、航空輸送の需要があり、当該地域へのアクセスを確保するうえで公的支援が不可欠な場合に限り、空港の開設や拡張などインフラ投資に対する補助金の交付が認められる。また、空港運営に関しては、年間利用者が300万人未満の地方空港を対象に10年間の移行期間を設け、黒字化に向けた事業計画の策定などを条件に、その間は公的資金で損失分を補てんすることが認められる。さらに自力での採算化が困難な年間利用者が70万人未満の空港については引き続き補助金の交付が認められるが、欧州委が5年ごとに状況をチェックして妥当性を判断する。一方、航空会社向けの公的支援に関しては、新ルート開設に際して期間限定で国家補助が認められる。
欧州委のアルムニア委員(競争政策担当)は「新たな指針はEU市民の移動手段を確保しながら、フラッグキャリアから格安航空会社、地方空港からハブ空港がビジネスモデルに関係なく、公正な条件で競争するための土台となるものだ」と強調している。