2014/3/17

産業・貿易

ノルウェー・フェロー諸島とサバ漁獲枠で合意、アイスランドは非難

この記事の要約

欧州委員会は12日、EU、ノルウェー、フェロー諸島(デンマーク領)の3者間で向こう5年間のサバの漁獲枠で合意したと発表した。大西洋北東海域の「サバ戦争」は収束に向けて大きく前進した形だが、今月5日にはアイスランドを加えた […]

欧州委員会は12日、EU、ノルウェー、フェロー諸島(デンマーク領)の3者間で向こう5年間のサバの漁獲枠で合意したと発表した。大西洋北東海域の「サバ戦争」は収束に向けて大きく前進した形だが、今月5日にはアイスランドを加えた4者協議が決裂した経緯があり、アイスランドは自国を除いた形での交渉成立に不快感を示している。

欧州委によると、2018年までのサバの漁獲割当はEUが61万1,000トン、ノルウェーが27万9,000トン、フェロー諸島が15万6,000トンとなっている。3者は持続可能な漁業の実現に向け、今年から長期的な水産資源の管理計画を実施することでも合意した。

欧州委のダマナキ委員(漁業・海事担当)は「3者間の合意は貴重な魚種の長期にわたる持続可能性を保証するものだ」と発言。そのうえで「近い将来、アイスランドが交渉に参加するためのドアは開いている」と述べ、アイスランドの漁獲枠は別枠で確保してあることを強調した。しかし、アイスランドのスベインソン外相は「われわれはEUやフェロー諸島と誠実に協議を重ねてきたが、その裏で別の交渉が進められ、唐突に合意が発表されたことに驚いている」とコメント。EUやノルウェーの対応を強く非難した。

北海のサバ漁をめぐっては、伝統的にEUとノルウェーが漁獲枠を定めてきたが、地球温暖化の影響で回遊ルートが変化した結果、アイスランド水域内でサバの生息数が増え、水揚げが急増した。同国は2010年、サバの漁獲枠を一方的に従来の6.5倍に拡大。フェロー諸島も同3.4倍に設定したことで、国際海洋探査委員会(ICES)が推奨する漁獲枠を全体で35%上回る見通しとなり、周辺国で資源枯渇への懸念が一気に高まった。

EUは対抗措置として、昨年からフェロー諸島からのサバとニシンの輸入を禁止するなどの制裁を発動している。アイスランドに対しては制裁を発動していないが、EU加盟交渉で漁獲権問題が最大の焦点に浮上した。昨年4月の総選挙で誕生した中道右派の連立政権は9月、公約通りに加盟交渉を無期限に凍結。先月にはEU加盟申請を取り下げる方針を閣議決定した。今年初めの世論調査ではEU加盟に反対する意見が約6割を占めていたが、連立与党が加盟交渉の凍結と並んで公約に掲げていた加盟申請の取り下げの是非を問う国民投票の実施が棚上げされたことで、国民の間で政府に対する不満が高まっている。