欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/20

EU産業・貿易

穀物由来バイオ燃料の利用比率は最大7%に、欧州議会環境委が法案採択

この記事の要約

欧州議会の環境委員会は14日、EUの輸送部門におけるエネルギー消費のうち、穀物由来のバイオ燃料の占める比率を最大7%に制限する法案を採択した。環境委はより厳格な規制を求める立場から、2月に同比率を6%とする案を採択したが […]

欧州議会の環境委員会は14日、EUの輸送部門におけるエネルギー消費のうち、穀物由来のバイオ燃料の占める比率を最大7%に制限する法案を採択した。環境委はより厳格な規制を求める立場から、2月に同比率を6%とする案を採択したが、業界側の反発を背景に加盟国は7%を上限とすることで合意しており、議長国ラトビアとの協議の末、環境委が妥協案を受け入れたかたち。法案は今月末の欧州議会本会議で採択される見通しで、加盟国は新規制に沿って2017年までに国内法を整備しなければならない。

EUは09年に制定した「再生可能エネルギー指令」に基づき、20年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする目標を掲げ、加盟国に目標達成を義務づけている。バイオ燃料はその柱となるものだが、菜種や大豆など穀物由来燃料の利用拡大は食料生産を阻害し、食料価格の高騰を招くほか、バイオ燃料の原料を栽培するための土地転用が環境破壊を招き、逆に温室効果ガスの増加を招きかねないとの懸念が浮上。これを受けて欧州委員会は12年、藻類や農産廃棄物などを原料とする次世代バイオ燃料の生産を促すため、輸送部門で使用される再生可能エネルギーのうち、穀物由来のバイオ燃料の比率を最大5%に制限する案を提示。同比率をめぐり欧州議会と加盟国の間で議論が続いていた。

法案の成立後、加盟国は18カ月以内に20年を達成期限とする次世代バイオ燃料の導入比率を定めなければならない。法案は指示的目標(indicative target)として同比率を0.5%に設定しているが、加盟国は原料の生産能力や技術的な問題、さらにエネルギー効率の向上や持続可能な輸送システムへの投資奨励策といった既存の政策とのバランスを考慮し、それぞれ実情に合わせてこれより低い目標を設定することができる。

一方、バイオ燃料の供給業者は法案に基づき、間接的土地利用変化(ILUC:燃料用作物生産のための農地移転)の影響を踏まえたバイオ燃料の温室効果ガス排出実績に関する報告書の提出が義務づけられる。欧州委は定期的にデータを公表し、再生可能エネルギー指令が定めるバイオ燃料の持続可能性基準にILUC由来の追加的排出を盛り込むべきかどうか判断することになる。