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2021/7/14

自動車

EUが独自動車メーカーのカルテルで制裁、排ガス浄化技術めぐる談合で

この記事の要約

●VWとBMWに対し計約8億7,500万ユーロの支払い命令●カルテルを通報したダイムラーは制裁を全額免除欧州委員会は8日、独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループ、BMW、ダイムラーが排ガス浄化装置をめぐるカルテ […]

●VWとBMWに対し計約8億7,500万ユーロの支払い命令

●カルテルを通報したダイムラーは制裁を全額免除

欧州委員会は8日、独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループ、BMW、ダイムラーが排ガス浄化装置をめぐるカルテルを結んでいたとして、合わせて約8億7,500万ユーロの制裁金支払いを命じたと発表した。窒素酸化物(NOx)を削減する選択触媒還元脱硝(SCR)システムで談合し、競争を避けたと認定して厳しい処分を下した。

SCRはディーゼル車の排出ガス中のNOxに尿素水を噴射し、化学反応によって無害な水と窒素に分解して排出するシステム。欧州委によると、VWグループ(VW本体とアウディ、ポルシェ)とBMW、ダイムラーは2009年6月から14年10月にかけて定期的に会合を開き、尿素水のタンクの大きさを制限することで合意するなど、反競争的な取り決めを結んでいた。

欧州委は各社が欧州連合(EU)基準を超える排ガス浄化を可能とする技術を持っていたものの、タンクの容量を制限することで浄化能力を故意に下げたのは容認できず、EU競争法に違反するとして、制裁に踏み切った。

制裁額はVWグループが約5億236万ユーロ、BMWが約3億7,282万ユーロ。ダイムラーは最初にカルテルを通報し、調査に協力したため、制裁を全額免除された。

EUによるカルテル摘発は、価格や生産数量などに関する談合のケースに集中していた。技術面での取り決めをめぐってカルテルと認定したのは初めて。ベステアー上級副委員長(競争政策担当)は「合法な技術協力から逸脱した」違法行為だと批判した。

欧州委は17年に同カルテル疑惑で各社に立ち入り調査を実施し、19年に異議告知書を送付していた。SCRシステムのほか、ガソリン車の有害微粒子排出を削減するオットー微粒子フィルター(OPF)をめぐるカルテルの調査も進めていたが、これについては違法行為の証拠が不十分として調査を打ち切った。